日本の会社が海外企業から著作権使用料、特許権使用料、配信料、ライセンス料、ロイヤリティなどを受け取る場合、支払国の国内法により源泉税が差し引かれることがあります。
日本と支払国との間に租税条約等が適用される場合には、所定の手続を行うことにより、支払国での源泉税が免除または軽減されることがあります。
ただし、必要となる申請書、添付書類、提出時期、提出先は国によって異なります。
このページでは、日本の会社が海外から使用料等を受け取る場合の租税条約の適用手続について、国別にご案内します。
このページの対象となる取引
主に、次のような取引を対象としています。
- ゲーム、アニメ、映像作品、出版物等の著作権使用料
- ソフトウェア、プログラム、デジタルコンテンツ等のライセンス料
- ゲームの海外配信や販売に伴うロイヤリティ
- 特許権、ノウハウ、製造技術等の使用料
- 商標権その他の知的財産権の使用料
- 海外パブリッシャーや海外ライセンシーから受け取る収入
契約書に「ロイヤリティ」「ライセンス料」などと記載されていても、租税条約上の所得区分が必ず使用料になるとは限りません。
実際の契約内容、許諾する権利、支払金額の計算方法などを確認したうえで、適用される条文と手続を判断する必要があります。
国別の租税条約申請
米国から使用料・ロイヤリティを受け取る場合
米国企業から著作権使用料、ゲームのライセンス料、配信料などを受け取る日本法人は、米国の支払者からW-8BEN-Eの提出を求められることがあります。
米国では、受取会社が日本の法人であることを示すだけでなく、租税条約の特典を受けるための要件や、会社の税務上の区分についても確認する必要があります。
主な確認事項は次のとおりです。
- 日米租税条約上の所得区分と税率
- W-8BEN-Eの記載内容
- 上場会社と非上場会社の記載方法の違い
- 租税条約の特典制限条項の判定
- 実質的受益者に該当するか
- 日本の居住者証明書が必要か
- 支払者と受取者の役割分担
- 米国の支払者へ提出する書類
【米国から使用料・ロイヤルティを受け取る場合の租税条約手続を見る】
英国から使用料・ロイヤリティを受け取る場合
英国企業から著作権使用料、特許権使用料、ライセンス料などを受け取る場合には、日英租税条約の適用関係と、英国側で必要となる手続を確認します。
英国では、支払者側が租税条約の適用要件を確認して支払う場合と、英国税務当局に対して正式な手続を行う場合があります。
主な確認事項は次のとおりです。
- 日英租税条約上の所得区分と税率
- 英国の支払者が採用する手続
- 英国税務当局に提出する書類
- 日本の居住者証明書の取得
- 実質的受益者に関する確認
- 英国に恒久的施設を有するか
- 支払い前に準備する書類
- 源泉徴収後の還付手続の可否
【英国から使用料を受け取る場合の租税条約手続を見る】
韓国から使用料・ロイヤリティを受け取る場合
韓国企業から著作権使用料、ゲームのライセンス料、特許権使用料などを受け取る場合には、韓国の支払者を通じて、租税条約の適用に必要な書類を提出することがあります。
主な確認事項は次のとおりです。
- 日韓租税条約上の所得区分と税率
- 非居住者租税条約適用申請書
- 日本の居住者証明書
- 実質的受益者に関する宣誓書
- 履歴事項全部証明書などの会社関係書類
- 日本語書類の英訳または韓国語訳
- 支払者と受取者の役割分担
- 韓国の支払者へ提出する時期
【韓国から使用料を受け取る場合の租税条約手続を見る】
台湾から使用料・ロイヤリティを受け取る場合
台湾企業から著作権使用料、ライセンス料、特許権使用料などを受け取る場合には、日台民間租税取決めに基づく手続を確認します。
台湾は、一般的な二国間租税条約とは異なる枠組みによって手続が行われるため、他国と同じ申請書を使用することはできません。
主な確認事項は次のとおりです。
- 日台間の取決めによる所得区分と上限税率
- 適用所得税協定上限税率申告書
- 受益者に関する宣言書
- 日本の居住者証明書
- 日本法人の会社関係書類
- 台湾の支払者と受取者の役割分担
- 台湾の税務当局への提出方法
- 支払い前に準備する書類
【台湾から使用料を受け取る場合の租税条約手続を見る】
その他の国から使用料を受け取る場合
米国、英国、韓国、台湾以外の国についても、租税条約または各国の国内法に基づく手続が必要になることがあります。
申請方法が国ごとに異なるだけでなく、同じ国でも、所得の種類、契約内容、受取会社の状況、支払者の社内手続などによって、求められる書類が変わることがあります。
掲載されていない国については、個別にお問い合わせください。
【ボタン:掲載されていない国について問い合わせる】
租税条約の適用前に確認する事項
租税条約の申請書を作成する前に、少なくとも次の事項を確認します。
1.契約上の権利と支払内容
契約書の名称だけではなく、相手企業にどのような権利を許諾し、その対価として何を受け取るのかを確認します。
ゲームの販売収入、開発委託料、著作権使用料、著作権の譲渡代金などは、税務上の取扱いが同じとは限りません。
2.適用される租税条約等
日本と支払国との間に適用される租税条約等があるかを確認します。
あわせて、使用料に関する条文だけでなく、事業所得、恒久的施設、実質的受益者、特典制限条項などの適用関係も検討します。
3.受取会社が条約の要件を満たすか
日本法人であることだけで、当然にすべての租税条約の特典を受けられるとは限りません。
国や条約によっては、株主構成、上場の有無、所得の支払先、事業活動の実態などが確認されます。
4.支払者が求める書類
租税条約の適用手続では、相手国の税務当局が定める書類だけでなく、海外の支払者が社内確認のために独自の書類を求めることがあります。
支払者から送付された申請書、質問票、契約書の写し、税務番号に関する資料などを確認します。
5.書類の提出時期
多くの取引では、実際の支払いが行われる前に、必要書類を準備することが重要です。
書類の準備が間に合わない場合には、いったん国内法による税率で源泉徴収され、後日、還付手続が必要になることがあります。
一般的な手続の流れ
第1段階 契約内容を確認する
契約書、請求書、支払条件などから、所得の内容と権利関係を確認します。
第2段階 租税条約等を確認する
支払国の国内法と、日本との租税条約等を確認します。
第3段階 必要書類を確認する
申請書、居住者証明書、会社関係書類、実質的受益者に関する書類などを整理します。
第4段階 日本側で書類を準備する
日本法人が記載する申請書を作成し、必要に応じて居住者証明書や履歴事項全部証明書などを取得します。
第5段階 海外の支払者へ提出する
作成した書類を海外の支払者へ送り、記載内容や不足書類について確認を受けます。
第6段階 源泉税額を確認する
実際の入金時に、租税条約に基づく税率が適用されているかを確認します。
よくあるご質問
租税条約があれば、自動的に源泉税が免除されますか
租税条約が締結されていても、必要な書類を提出しなければ、支払国の国内法による税率で源泉徴収されることがあります。
また、租税条約上の要件を満たしているかどうかについて、支払者または相手国の税務当局による確認が行われる場合があります。
日本の居住者証明書だけを提出すればよいですか
居住者証明書だけで手続が完了するとは限りません。
国によっては、所定の申請書、実質的受益者に関する書類、会社の登記事項を示す書類、契約書などの提出が必要になります。
支払いを受けた後でも手続できますか
国によっては、源泉徴収された税額について還付申請ができることがあります。
ただし、還付申請には時間がかかることがあり、追加書類や現地での手続が必要になる場合もあるため、原則として支払い前に確認することが重要です。
海外の支払者から書類を渡されていません
支払者が手続を把握していない場合や、支払者の経理担当者が日本との租税条約を確認していない場合があります。
源泉徴収の有無、適用予定の税率、必要書類、提出期限について、支払者へ事前に確認します。
ゲーム会社以外でも利用できますか
ゲーム会社に限りません。
アニメ、出版、映像、音楽、ソフトウェア、製造業、研究開発など、海外企業から著作権使用料、特許権使用料、ライセンス料等を受け取る日本法人が対象となります。
海外の税務申告も依頼できますか
当事務所の支援範囲は、原則として、日本法人が海外の支払者へ提出する書類の確認、作成支援および日本の居住者証明書の取得支援です。
相手国で税務代理や税務申告が必要となる場合には、現地の税務専門家への依頼が必要になることがあります。
租税条約対応ガイド
当事務所では、海外から著作権使用料、特許権使用料、ライセンス料等を受け取る日本法人向けに、国別の租税条約対応ガイドを作成しています。
ガイドには、主に次の内容を掲載しています。
- 租税条約適用後の税率
- 支払者と受取者の役割分担
- 申請書の記載方法
- 上場会社と非上場会社の記載例
- 居住者証明書の取得方法
- 必要となる添付書類
- 英文書類や宣誓書の記載例
- 提出書類チェックリスト
- 海外の支払者へ確認する事項
個別の書類作成・確認にも対応します
次のような場合には、個別の税務相談や書類作成支援をご利用いただけます。
- 海外企業から申請書の提出を求められた
- W-8BEN-Eの記載方法が分からない
- どの租税条約の条文を適用するか分からない
- 契約上の収入が使用料に該当するか確認したい
- 居住者証明書の取得方法が分からない
- 支払者から英文の質問票が届いた
- すでに源泉徴収されている
- 国別ガイドに掲載されていない取引である
オンライン面談により、全国からご相談いただけます。
執筆・監修者
三谷 豊章
税理士・三谷豊章税理士事務所代表
名古屋国税局、税務大学校名古屋研修所および税務署において、税法解釈、税務相談、国税職員研修等に従事しました。
令和6年7月に名古屋西税務署を退職し、令和6年10月に三谷豊章税理士事務所を開設しました。
法人税、所得税、相続税、税務調査、海外企業との取引に係る源泉徴収、租税条約の適用手続などを中心に支援しています。
ご利用上の注意
このページは、租税条約に関する一般的な情報を提供するものです。
実際に適用される税率、申請書、添付書類および提出方法は、支払国、所得の内容、契約条件、受取会社の状況、支払時期などによって異なります。
また、各国の法令、申請様式および税務当局の取扱いは変更されることがあります。実際の手続に当たっては、最新の法令、公式資料および支払者からの案内をご確認ください。
最終更新日:2026年7月
