アメリカの租税条約申請

ゲーム配信許諾の著作権使用料とW-8BEN-E

 日本のゲーム会社が米国パブリッシャーへゲームの出版・配信権を許諾して受け取る著作権使用料は、米国で原則30%の源泉徴収対象となり得ます。

 日米租税条約第12条と第22条などの要件を満たす場合、米国の源泉税は0%となる可能性があります。

 日本法人は、支払前にW-8BEN-Eを米国の支払者へ提出します。W-8BEN-EをIRSへ直接送付するものではありません。

 上場会社と非上場会社では、特典制限条項(LOB)とFATCA上の区分の確認方法が異なります。

このページの目次

 このページは、日本法人であるゲーム開発会社が、米国のゲームパブリッシャーに対してゲームを米国内で出版・配信する権利を許諾し、その対価として著作権使用料を受け取る取引を対象にしています。

 契約書の名称が「Publishing Agreement」「License Agreement」「Royalty Fee」であっても、税務上の所得区分は名称だけでは決まりません。許諾する権利、利用地域、利用期間、対価の計算方法など、契約内容の実質を確認します。

 このページの対象は、米国パブリッシャーから著作権使用料を受け取る日本法人です

 想定する取引は、日本のゲーム会社が自社ゲームの著作権を保有したまま、米国パブリッシャーへ米国内での出版・配信権を許諾し、売上連動または契約で定めた方法によりロイヤリティを受け取るものです。

対象外:配当、利子、給与、単純な業務委託報酬、ゲーム自体の著作権譲渡、米国に恒久的施設を有する場合の事業所得は、このページとは別に判定します。

結論:日米租税条約の要件を満たせば、米国の源泉税は0%になり得ます

 米国の国内法では、外国法人に支払われる著作権使用料は、原則として総額の30%が源泉徴収の対象となり得ます。

 一方、日米租税条約第12条第1項により、日本の居住者が実質的に受益する使用料は、条約の他の要件を満たす場合、日本においてのみ課税されます。

 このため、米国側の源泉税率は0%となる可能性があります。

所得の区分条約適用前条約適用後主な根拠
ゲームの出版・配信権の許諾に係る著作権使用料原則30%0%(免税)日米租税条約 第12条第1項

 ここでいう0%は米国での源泉徴収税率です。

 受領した著作権使用料は、日本法人の法人税申告に反映します。

源泉税0%を受けるために確認する主な要件

 日米租税条約の0%は自動的に適用されません。契約内容と会社の状況を確認し、W-8BEN-Eで条約上の資格を示します。

1. 支払の実質が著作権使用料であること

 ゲームを出版・配信する権利、複製権、公衆送信に関する権利など、著作権の使用または使用許諾の対価であるかを確認します。

 開発作業、運営支援、マーケティング協力などの役務報酬が混在する場合は、契約上の対価を区分して検討します。

2. 日本法人が使用料の実質的受益者であること

 日本法人が単なる名義人や受取代理人ではなく、使用料を自己の収入として受け取り、自由に処分できる実質的受益者であることが必要です。

3. 米国事業と実質的に関連しない所得(非ECI)であること

 このページは、米国内で行う事業と実質的に関連しない著作権使用料を前提としています。 

 米国の恒久的施設や米国事業と実質的に関連する所得に該当する場合は、W-8ECIや米国税務申告の検討が必要になることがあります。

4. 日米租税条約第22条の特典制限条項(LOB)を満たすこと

 日米租税条約の特典は、日本法人であれば無条件に受けられるわけではありません。

 上場会社、上場会社の子会社、所有要件・課税ベース浸食要件を満たす会社など、条約第22条に定める資格を確認します。

5. 支払前にW-8BEN-Eを提出すること

 条約適用を受けるため、日本法人は、米国パブリッシャーが支払処理を行う前にW-8BEN-Eを提出します。

 支払者独自の税務インタビュー画面を使用する場合も、入力の基礎となる判定は同じです。

米国の支払者へ提出・提示するために準備する書類

 基本書類はW-8BEN-Eです。

 居住者証明書、契約書、請求書は、米国パブリッシャー、源泉徴収義務者、銀行などから求められた場合に備えて準備します。

書類日本法人の対応提出・保管先確認事項
W-8BEN-E作成・署名・送付米国の支払者が保管法人区分、FATCA区分、条約、LOB
居住者証明書所轄税務署へ交付請求求められた場合に支払者等へ提出日本の租税条約上の居住者であること
契約書の写し権利と対価を確認求められた場合に支払者・銀行等へ提出ゲーム名、許諾権利、地域、期間、計算方法
請求書の写し支払内容と金額を確認求められた場合に支払者・銀行等へ提出Royalty Fee、対象期間、契約番号

提出先の整理:通常の源泉徴収手続では、W-8BEN-EをIRSへ直接送付しません。

       日本法人が作成して米国の支払者へ提出し、支払者が保管します。

W-8BEN-Eは日本法人が作成し、米国パブリッシャーへ提出します

 W-8BEN-Eは、外国法人が米国の源泉徴収およびFATCA上の地位を証明し、租税条約の軽減・免除を請求するための書類です。

 ゲームの著作権使用料を受け取る日本法人は、会社の事実関係に応じて必要なPartを記載します。

Part I:日本法人の基本情報

  • 法人の正式な英文名称
  • 設立国としてJapan
  • Chapter 3 StatusとしてCorporation
  • Chapter 4 Status(FATCA区分)
  • 法人の所在地と国名
  • Foreign TINとして日本の法人番号
  • 必要に応じて契約番号または支払者の管理番号

Part III:日米租税条約の適用

  • 日本の租税条約上の居住者であること
  • 該当するLOB区分
  • 日米租税条約第12条第1項
  • 米国の源泉税率0%
  • 所得の種類がゲームの出版・配信権の許諾に係る著作権使用料であること
  • 条約適用の追加条件や事実関係

 Line 15の英文や上場会社・非上場会社別のチェック箇所は、個別の株主構成、収入・資産、国外支払等を確認して作成します。

Part XXX:署名

 法人を代表して署名する権限がある者が、記載内容が真実、正確かつ完全であることを確認し、署名、氏名、日付を記載します。

上場会社と非上場会社では、W-8BEN-Eの確認箇所が異なります

区分Chapter 4 Statusの代表例LOBの代表例主な確認資料
上場会社Publicly traded NFFEPublicly traded corporation上場市場、主要な種類の株式、取引状況
非上場の事業会社Active NFFE(要件を満たす場合)Ownership and base erosion test(要件を満たす場合)株主名簿、資本関係、決算書、国外支払

上場会社のLOB

 主要な種類の株式が認定証券取引所で定期的に取引されているなど、日米租税条約第22条第1項(c)(i)の要件を確認します。

 W-8BEN-Eでは、上場NFFEの認証と、上場法人としてのLOB区分をそれぞれ判定します。

非上場会社の所有要件・課税ベース浸食要件

  • 各種類の株式その他の持分の50%以上が、日米租税条約第22条第1項の一定の適格者により、直接または間接に所有されていること
  • 総所得の50%未満しか、日本または米国のいずれの居住者でもない者への損金算入可能な支払に充てられていないこと

 株主が日本居住者であることだけでなく、条約上の適格者に該当するか、国外への支払が基準内かを確認します。

Active NFFEとLOBは別の判定です

 Active NFFEはFATCA上のChapter 4 Statusです。

 LOBは日米租税条約上の特典を受けられるかの判定です。

 非上場会社では、受動的所得・受動的資産の割合と、株主構成・国外支払の双方を別々に確認します。

居住者証明書は、支払者等から求められた場合に所轄税務署で取得します

 居住者証明書は、日本法人が日米租税条約上の日本の居住者であることを日本の税務署が証明する書類です。

 W-8BEN-Eだけで処理される場合もありますが、米国パブリッシャー、銀行、監査部門などが追加資料として求めることがあります。

  1. 国税庁の租税条約等締結国用の様式を入手する
  2. 法人名、代表者、所在地、提出先国を日本語と英語で記載する
  3. 必要部数に1部を加えて、所轄税務署の管理運営部門へ提出する
  4. 代理人が請求する場合は委任状を用意する
  5. 郵送の場合は返信用封筒など必要書類を同封する

交付には日数がかかることがあります。支払期限から逆算し、早めに準備します。

契約書と請求書では、著作権使用料の根拠を明確にします

 契約書と請求書の記載は、W-8BEN-Eで主張する所得区分と整合させます。

 少なくとも次の項目を確認します。

  • 対象ゲームの名称
  • 米国内で許諾する出版・配信権の範囲
  • 許諾地域
  • 許諾期間
  • 著作権の帰属
  • 著作権使用料の算定方法と支払時期
  • 契約番号、請求対象期間、通貨

 契約書に「Royalty Fee」と記載するだけでは十分ではありません。権利許諾の実態と対価の関係が分かるようにします。

米国パブリッシャーから支払を受ける前の実務手順

  1. 契約書を確認し、支払が著作権使用料に該当するかを判定する
  2. 米国パブリッシャーが求めるW-8BEN-E、税務インタビュー、追加資料を確認する
  3. 日本法人のChapter 3 Status、Chapter 4 Status、LOB要件を判定する
  4. W-8BEN-Eを作成し、必要に応じて居住者証明書、契約書、請求書を準備する
  5. 最初の支払または入金処理の前に、米国パブリッシャーへ提出する
  6. 支払明細で源泉税率を確認し、提出書類と根拠資料を保存する
  7. 株主構成、事業内容、所在地などに変更があれば、再提出の要否を確認する

米国から日本への銀行送金では、口座情報と取引資料を整えます

米国の支払者や銀行から、受取口座と送金目的に関する情報を求められることがあります。

  • Beneficiary Name(銀行届出と一致する英文社名)
  • Beneficiary Address
  • Beneficiary Bank Name、Branch Name、Bank Address
  • SWIFT/BIC Code
  • Account Number
  • Currency(USDまたはJPYなど)
  • Purpose of Remittance(例:PAYMENT FOR ROYALTY FEE)

 契約書、請求書、W-8BEN-E、送金情報で、法人名、住所、契約番号、支払目的の表現をできるだけ一致させます。

 銀行から会社のウェブサイトや登記情報の英訳を求められる場合もあります。

アメリカの租税条約対応でよくある誤り

  • 契約書にRoyalty Feeとあるだけで、所得区分を確定する
  • 上場・非上場だけでFATCA区分とLOB区分を選ぶ
  • Active NFFEと条約上のLOBを同じ判定と考える
  • W-8BEN-EをIRSへ直接送付する
  • 支払後に書類を準備し、30%を源泉徴収されてから対応する
  • 契約書と請求書で、権利、期間、計算方法が明確でない
  • 株主構成や国外支払が変わっても、W-8BEN-Eを見直さない

アメリカのゲーム著作権使用料に関するよくある質問

Q1. 米国パブリッシャーからロイヤリティを受け取れば、必ず源泉税0%ですか

 いいえ。

 支払が条約上の使用料であること、日本法人が実質的受益者であること、米国での事業活動と関連していない所得であること、LOB要件を満たすことなどを確認し、W-8BEN-Eを適切に提出する必要があります。

Q2. W-8BEN-EはIRSへ提出しますか

 提出しません。

 日本法人から米国の支払者または源泉徴収義務者へ提出し、支払者が保管します。

Q3. 居住者証明書は必ず必要ですか

 常に必要とは限りません。

 W-8BEN-Eだけで処理される場合もありますが、支払者や銀行が追加確認として求めることがあります。

Q4. 非上場の日本法人でも源泉税0%を受けられますか

 受けられる可能性があります。

 所有要件・課税ベース浸食要件など、日米租税条約第22条のいずれかの資格を満たすかを確認します。

Q5. Active NFFEに該当すれば、LOB要件も満たしますか

 自動的には満たしません。

 Active NFFEはFATCA上の区分であり、LOBは租税条約上の資格です。収入・資産と、株主構成・国外支払を別々に判定します。

Q6. Form 8833も米国パブリッシャーへ提出しますか

 通常のW-8BEN-Eによる源泉徴収手続の基本書類ではありません。

 Form 8833は、米国税務申告書で条約に基づく申告ポジションの開示が必要となる場合に添付する書類です。

 このページの取引でW-8BEN-Eにより源泉税免除を請求するだけの場合、通常は提出を要しません。

Q7. 個人のゲーム開発者もW-8BEN-Eを使いますか

 通常、個人はW-8BENを使用し、法人その他の事業体はW-8BEN-Eを使用します。

 このページは日本法人を対象にしています。

Q8. 支払後にW-8BEN-Eを提出しても間に合いますか

 支払前の提出が基本です。

 いったん30%が源泉徴収されると、支払者による訂正や米国での還付手続が必要になることがあるため、契約締結後の早い段階で準備します。

三谷豊章税理士事務所のアメリカ租税条約対応サポート

 三谷豊章税理士事務所では、日本のゲーム会社が米国パブリッシャーから受け取る著作権使用料について、契約内容と所得区分の確認、日米租税条約の適用判定、W-8BEN-Eの記載支援、居住者証明書の取得支援、支払者からの質問への対応を行っています。

 詳細なW-8BEN-Eの上場会社・非上場会社別の記載例、Line 15の英文例、居住者証明書の記載手順、提出書類チェックリスト、銀行送金情報は、「ゲーム配信許諾に係る著作権使用料に関する租税条約対応ガイド【アメリカ編】」に収録しています。

執筆・監修

三谷 豊章(税理士・三谷豊章税理士事務所)

 名古屋国税局、税務大学校名古屋研修所、各税務署において約17年間、税法の解釈・適用に関する研修業務および納税者・税理士からの税務相談対応に従事。2024年7月に名古屋西税務署を退職し、2024年10月に三谷豊章税理士事務所を開設。

主な公的資料

最終更新日:2026年7月18日

利用上の注意

 このページは、日本法人が米国のゲームパブリッシャーからゲームの出版・配信権の許諾に係る著作権使用料を受け取る場合の一般的な情報を整理したものです。

 契約内容、所得区分、権利の範囲、法人形態、株主構成、受益者要件、LOB要件、米国での事業活動、支払者の社内手続などにより取扱いは異なります。

 個別案件の税務判断、米国法上の申告義務、W-8BEN-E以外の書類の要否については、事実関係に応じて日本および米国の専門家へ確認してください。