ポーランド国内法では、日本法人に支払われる著作権使用料は、原則として20%の源泉徴収対象となり得ます。
ゲームの海外パブリッシング契約に基づく著作権使用料が、日・ポーランド租税条約第12条の著作権使用料(文化的使用料)に該当し、受取人が実質的受益者などの要件を満たす場合、ポーランドの源泉税は0%となり得ます。
日本法人は、支払前に居住者証明書その他の資料をポーランドのゲームパブリッシャーへ提供し、支払者が相当な注意をもって条約適用の可否を確認します。
このページの目次
- このページの対象
- 結論とポーランド源泉税0%の考え方
- 租税条約の免税を受けるための主な要件
- ポーランドの支払者へ準備する書類
- 日本法人とポーランドの支払者の役割分担
- 居住者証明書の取得方法
- アポスティーユの取扱い
- 支払者確認用情報シートの位置付け
- 実質的受益者の確認
- ポーランドに恒久的施設がないことの確認
- 支払前の実務手順
- ポーランドから日本への銀行送金
- よくある誤り
- よくある質問
- 当事務所の対応サポート
- 執筆・監修
- 主な公的資料
- 利用上の注意
このページの対象
このページは、日本法人であるゲーム会社が、自社ゲームの著作権を保有したまま、ポーランドのゲームパブリッシャーへポーランド国内での出版・配信権を許諾し、その対価として著作権使用料を受け取る取引を対象にしています。
対象となる著作権使用料は、日・ポーランド租税条約第12条にいう著作権使用料(文化的使用料)として取り扱うことを前提とします。
日本法人とポーランド法人との間に出資関係や親子会社関係がない、通常の海外パブリッシング契約を想定しています。
結論:条約要件を満たせば、ポーランドの源泉税は0%となり得ます
ポーランド国内法では、非居住法人に支払われる著作権使用料は、原則として20%の源泉徴収対象となり得ます。
一方、日・ポーランド租税条約第12条第2項(b)は、著作権使用料について、受取人が他方の締約国の居住者であり、その使用料の実質的受益者である場合、支払地国で免税となり得ることを定めています。
このため、日本法人が条約上の要件を満たし、ポーランドの支払者が必要書類を確認した場合、ポーランド側の源泉税率は0%となり得ます。
| 所得の区分 | 条約適用前 | 条約適用後 | 主な根拠 |
| ゲームの出版・配信権の許諾に係る著作権使用料(文化的使用料) | 原則20% | 0%(免税) | 日・ポーランド租税条約 第12条第2項(b) |
0%の意味
ここでいう0%は、ポーランドでの源泉徴収税率です。
受領した著作権使用料は、日本法人の法人税申告に反映します。
0%は自動的に適用されるものではありません。
ポーランドの支払者が、居住者証明書、契約書、実質的受益者に関する資料などを確認したうえで判断します。
租税条約の免税を受けるために確認する主な要件
1.日本法人が租税条約上の日本の居住者であること
日本の所轄税務署が発行する居住者証明書により確認します。
2.支払がゲーム著作権の使用許諾に対する文化的使用料であること
契約書では、対象ゲーム、著作権者、ポーランド国内で許諾する出版・配信権、許諾期間、使用料の算定方法および支払時期を明確にします。
3.日本法人が使用料の実質的受益者であること
日本法人が単なる名義人、受取代理人またはパススルーではなく、使用料を自己の収入として受け取り、その処分を決定し、経済的リスクを負うことを確認します。
4.使用料に関係する権利がポーランドの恒久的施設と実質的に関連していないこと
このページは、日本法人がポーランドに恒久的施設を有しない取引を前提としています。
5.支払前に、支払者が求める資料を提出すること
ポーランドの支払者は、国内法上の相当な注意をもって条約適用要件を確認します。
必要資料は、契約締結後の早い段階で確認します。
ポーランドの支払者へ提出・提示するために準備する書類
日本法人が準備する基本資料は次のとおりです。
ポーランドの支払者が独自の質問票や様式を指定する場合は、その案内を優先します。
| 書類 | 日本法人の対応 | 提出・保管先 | 主な確認事項 |
| 居住者証明書 | 所轄税務署へ交付請求 | ポーランドの支払者 | 日本の租税条約上の居住者であること |
| 支払者確認用情報シート | 会社情報・支払情報を整理 | ポーランドの支払者 | 正式名称、所在地、法人番号、契約番号、支払期間・金額 |
| 実質的受益者宣誓書 | 事実関係を確認して署名 | ポーランドの支払者 | 自己のために受領し、自由に処分できること |
| 恒久的施設不存在の宣誓書 | 事実関係を確認して署名 | ポーランドの支払者 | ポーランドに支店、営業所などを有しないこと |
| 海外パブリッシング契約書の写し | 権利と対価を確認 | 支払者・銀行等 | ゲーム名、許諾権利、地域、期間、使用料算定 |
| 請求書の写し | 契約との整合を確認 | 支払者・銀行等 | 契約番号、対象期間、金額、通貨、支払目的 |
会社登記、著作権の保有状況、事業内容、従業員・制作体制、事務所の実在性など、追加の確認資料を求められる場合があります。
日本法人とポーランドの支払者の役割分担
| 段階 | 日本法人(受取人) | ポーランド法人(支払者) |
| 契約締結後 | 条約適用を希望する旨を伝え、必要資料と提出期限を確認 | 社内手続、必要資料、提出形式を案内 |
| 資料準備 | 居住者証明書その他の資料を作成・取得 | 受領資料を確認し、追加資料を依頼 |
| 支払前 | 署名済み資料を提出し、記載内容の一致を確認 | 相当な注意をもって条約要件と国内手続を確認 |
| 支払時 | 支払明細を確認 | 適用可能な源泉税率を決定し、支払処理 |
| 支払後 | 提出資料、判断根拠、支払明細を保存 | 源泉徴収・情報申告等の国内義務を履行 |
提出先の整理
通常、日本法人がポーランド税務当局へ一般的な免税申請書を直接提出する方式ではありません。
日本法人はポーランドの支払者へ資料を提供し、支払者が条約適用とポーランド国内の源泉徴収手続を判断します。
居住者証明書は所轄税務署で取得します
居住者証明書は、日本法人が日・ポーランド租税条約上の日本の居住者であることを、日本の税務署が証明する書類です。
1. 国税庁の「居住者証明書交付請求書・居住者証明書(租税条約等締結国用)」を入手します。
2. 法人名、代表者名、所在地および提出先国を日本語と英語で記載します。
提出先国は「ポーランド共和国/Republic of Poland」とします。
3. 国税庁の案内に従い、居住者証明書2部および交付請求書を所轄税務署の管理運営部門へ提出します。
国税庁様式では、交付請求書と居住者証明書が一体になっています。
4. 代理人が請求する場合は、法人代表者からの委任状を添付します。
5. 郵送の場合は、封筒に「居住者証明請求在中」と記載し、所要の切手を貼った返信用封筒を同封します。
国税庁の手続・様式:No.9210 居住者証明書の請求
交付までの期間
交付には日数がかかることがあり、追加の確認資料を求められる場合もあります。
固定的な所要日数を前提にせず、最初の支払日から逆算して早めに請求します。
居住者証明書の有効期間や更新時期は、ポーランドの支払者が採用する確認方針に従います。
アポスティーユは、提出先から求められた場合に取得します
日本の税務署が発行した居住者証明書について、すべての案件でアポスティーユが一律に必要となるわけではありません。
まず、ポーランドの支払者、取引銀行または提出先機関に必要性を確認し、外務省の証明を求められた場合に手続きを行います。
- 税務署発行の居住者証明書の原本を準備する
- 外務省の最新の申請手続、必要書類、原本の発行日要件を確認する
- 郵送または窓口の案内に従って申請する
- 証明取得後、ポーランドの支払者等へ提出する
外務省の最新案内:証明(公印確認・アポスティーユ)
実質的受益者であることを、事実関係と資料で確認します
ポーランドの支払者は、日本法人が著作権使用料の実質的受益者であるかを確認します。
宣誓書だけでなく、会社の実態や契約関係を示す資料を求められる場合があります。
- 日本法人が使用料を自己の名義と自己の利益のために受領すること
- 使用料を自由に使用・処分する権限を有すること
- 他者の代理人、名義人またはパススルーではないこと
- 使用料に関する経済的リスクを負うこと
- 受領した使用料を第三者へ移転する契約上または事実上の義務がないこと
- 日本で実際の事業活動を行っていること
追加資料として、著作権の保有を示す資料、会社登記、事業内容、従業員・制作体制、事務所、関係会社との契約関係などを求められることがあります。
ポーランドに恒久的施設がないことを確認します
このページは、日本法人がポーランドに支店、営業所その他の恒久的施設を有せず、著作権使用料に関係する権利がポーランドの恒久的施設と実質的に関連していないことを前提としています。
ポーランドの支払者から求められた場合は、恒久的施設不存在の宣誓書を作成し、法人の代表権限を有する者が署名します。
ポーランドの支払者から支払を受ける前の実務手順
1. 海外パブリッシング契約書で、対象ゲーム、著作権者、ポーランド国内で許諾する出版・配信権、許諾期間、使用料の計算方法および支払時期を確認します。
2. ポーランドの支払者が求める書類、電子入力、署名方法、提出期限およびアポスティーユの要否を確認します。
3. 居住者証明書を所轄税務署へ早めに請求します。
4. 支払者確認用情報シート、実質的受益者宣誓書および恒久的施設不存在の宣誓書を、実際の会社情報と契約内容に基づいて作成します。
5. 最初の著作権使用料の支払前に、ポーランドの支払者へ必要資料を提出します。
6. 支払明細で源泉税率と支払額を確認し、提出書類、契約書、請求書、支払明細および判断根拠を保存します。
7. 会社名、所在地、著作権の保有状況、契約条件その他の重要事項に変更が生じた場合は、速やかに支払者へ連絡します。
ポーランドから日本への銀行送金では、口座情報と取引資料を整えます
ポーランドの支払者または取引銀行から、次の情報や資料を求められることがあります。銀行届出情報と完全に一致する内容を使用します。
項目
記載内容・確認事項
Beneficiary Name
銀行に届け出ている日本法人の英文名称
Beneficiary Address
日本法人の英文住所
Beneficiary Bank Name / Branch Name
受取銀行・支店の正式な英文名称
Bank Address
銀行が案内する英文住所
SWIFT / BIC Code
受取銀行が案内するコード
Account Number
銀行が指定する形式の口座番号
Currency
契約書・請求書に定めた受取通貨
Purpose of Remittance
PAYMENT FOR VIDEO GAME DISTRIBUTION COPYRIGHT ROYALTY など
- 海外パブリッシング契約書の写し
- 請求書の写し
- 居住者証明書
- 対象ゲーム、契約番号、許諾地域、対象期間、使用料の計算根拠が分かる資料
- 会社のウェブサイトまたは会社登記の英訳資料(求められた場合)
契約書、請求書、条約関係資料および送金情報で、法人名、住所、契約番号、金額、通貨および支払目的の表現をできるだけ一致させます。
ポーランドの租税条約対応でよくある誤り
- ポーランドの源泉税0%が自動的に適用されると考え、支払前に資料を提出しない
- 居住者証明書の交付期間を固定的に見込み、初回支払に間に合わない
- 実質的受益者宣誓書だけで確認が完了すると考え、会社の事業実態を示す資料を準備しない
- 恒久的施設不存在を居住者証明書で証明してもらおうとする
- アポスティーユの要否を提出先へ確認せず、一律に必要または不要と判断する
- 契約書、請求書、宣誓書、銀行送金情報で、法人名、住所、契約番号または支払目的が一致していない
- 署名権限、署名日または対象期間が不明確な資料を提出する
ポーランドのゲーム著作権使用料に関するよくある質問
Q1.ポーランドのゲームパブリッシャーから著作権使用料を受け取れば、必ず源泉税0%ですか
必ず0%になるわけではありません。
日本の居住者であること、実質的受益者であること、ポーランドの恒久的施設と実質的に関連しないことなどを確認し、支払前に必要資料を提出します。
Q2.日本法人がポーランド税務当局へ免税申請書を直接提出しますか
通常は、ポーランドの支払者へ必要資料を提供し、支払者が条約適用と国内WHT手続を確認します。
支払者から別の手続を案内された場合は、その指示に従います。
Q3.居住者証明書は必要ですか
ポーランドの支払者が条約上の居住性を確認するための基本資料です。
支払前に取得し、支払者が指定する形式で提出します。
Q4.居住者証明書にアポスティーユは必ず必要ですか
一律に必要ではありません。
ポーランドの支払者、取引銀行または提出先機関へ確認し、求められた場合に取得します。
Q5.実質的受益者宣誓書を提出すれば十分ですか
宣誓書だけで確認が完了するとは限りません。
著作権の保有、会社の事業実態、契約関係、使用料を自由に処分できることなどを示す追加資料を求められる場合があります。
Q6.支払後に資料を提出しても間に合いますか
支払前の提出が基本です。
いったんポーランドで源泉徴収されると、訂正または還付の手続が必要となることがあるため、契約締結後の早い段階で準備します。
三谷豊章税理士事務所のポーランド租税条約対応サポート
三谷豊章税理士事務所では、日本のゲーム会社がポーランドのゲームパブリッシャーから受け取る著作権使用料について、海外パブリッシング契約と租税条約の確認、提出資料の作成支援、居住者証明書の取得支援、実質的受益者・恒久的施設に関する確認および支払者からの質問への対応を行っています。
詳細な記載例、宣誓書の英文例、支払者確認用情報シート、提出書類チェックリストおよび銀行送金情報は、「ゲーム海外パブリッシングに係る著作権使用料の租税条約対応ガイド【ポーランド編】」に収録しています。
執筆・監修
三谷 豊章(税理士・三谷豊章税理士事務所)
名古屋国税局、税務大学校名古屋研修所、各税務署において約17年間、税法の解釈・適用に関する研修業務および納税者・税理士からの税務相談対応に従事。
2024年7月に名古屋西税務署を退職し、2024年10月に三谷豊章税理士事務所を開設。
主な公的資料
最終更新日:2026年8月4日
- 日・ポーランド租税条約
- ポーランド財務省:Withholding Tax(WHT)
- ポーランド財務省:法人所得税の税率・限度額
- 国税庁:No.9210 居住者証明書の請求
- 外務省:証明(公印確認・アポスティーユ)
利用上の注意
このページは、日本法人が自社ゲームの著作権を保有したまま、ポーランドのゲームパブリッシャーへポーランド国内での出版・配信権を許諾し、著作権使用料(文化的使用料)を受け取る場合の一般的な情報を整理したものです。
許諾する権利の内容、契約条件、実質的受益者、会社の事業実態、ポーランドの恒久的施設の有無、支払者の社内手続およびポーランド国内法上の運用により、必要資料と取扱いが異なることがあります。
個別案件の税務判断、ポーランド国内の申告・源泉徴収義務および還付手続については、事実関係に応じて日本およびポーランドの専門家へ確認してください。
