ゲーム会社が海外のクリエーターへ外注するときの源泉徴収と著作権の基礎知識

 イラスト・シナリオ・3D・BGM・プログラムなどをゲーム制作工程別に解説

 ゲーム開発では、海外在住のイラストレーター、シナリオライター、3Dモデラー、作曲家、プログラマー、声優、翻訳者などへ制作業務を依頼することがあります。

 このページは、日本のゲーム会社が海外のクリエイターから著作物等の利用許諾を受け、その対価の全部または一部が「著作権の使用料」に該当する場合を中心に、源泉徴収と租税条約の考え方を整理するものです。

 単なる制作役務の対価と著作権使用料は同じではありません。

 海外で行われた制作作業の報酬が直ちに日本の源泉徴収対象になるわけではなく、著作権使用料に該当する部分があるかを分けて確認することが重要です。

 このページでは、次の順序で各作業を整理します。

1.実際に何を制作してもらうのか

2.その成果物に著作権・著作隣接権等が生じ得るのか

3.日本のゲーム会社がどのような利用許諾を受けるのか

4.支払額のうち著作権使用料に該当する部分はいくらか

5.国内法の源泉税率と、相手国との租税条約上の限度税率はいくらか

このページの対象

 このページでは、日本のゲーム会社が、日本国外に居住する個人・法人へゲーム制作を依頼し、その成果物について日本のゲーム会社が利用許諾を受け、支払対価の全部または一部が著作権等の使用料に該当する場合を対象とします。

 著作権を全面的に譲渡する契約、国内で行われる人的役務などは、同じ相手への支払いでも別の論点が生じる場合があります。

 このページでは、あくまで「著作権等の使用料」を中心に説明します。

 契約書に「license」「royalty」と書いてあるだけで税務上の使用料になるとは限りません。

 反対に「制作費」と書いてあっても、実質的に著作物を利用する対価が含まれていれば、使用料部分の検討が必要です。

目次

 各項目をクリックすると本文へ移動します。

最初に知っておきたい9つの基本ルール

1.ゲーム企画・ゲームデザイン

2.シナリオ・脚本・プロット・台詞

3.キャラクターデザイン・イラスト・背景

4.ロゴ・アイコン・UIグラフィック

5.3Dモデリング

6.リギング・スキニング

7.モーション・アニメーション

8.VFX・エフェクト

9.ゲームプログラミング

10.BGM・作曲・編曲

11.効果音・録音・ミックス

12.声優・ナレーション

13.翻訳・ローカライズ

14.翻訳チェック・校正・LQA

15.デバッグ・QA・テストプレイ

16.一人(一社)に複数の作業を依頼する場合

17.海外クリエイターとの契約で確認したい事項

18.国内法の税率と租税条約の適用手続

19.国別・著作権使用料の租税条約上の限度税率

20.よくある質問

21.まとめ

参考資料

最初に知っておきたい9つの基本ルール

1.まず「制作報酬」と「著作権使用料」を分けて考えます

 海外クリエイターへの支払いでは、最初に「海外で制作作業をしてもらったことへの対価」と「完成した著作物を日本のゲーム会社が利用することへの対価」を区別します。

 例えば、海外のイラストレーターにキャラクター制作を依頼し、制作後も著作権をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、PV、広告等で利用する許諾を受ける場合には、契約内容によっては、その利用許諾の対価が著作権使用料として問題になります。

本ページの基本前提:

 制作役務そのものではなく、日本のゲーム会社が著作物を利用する対価として支払う「著作権使用料」を中心に源泉徴収を検討します。

2.海外で制作されたからといって、著作権使用料まで日本の課税対象外になるわけではありません

 人的役務の対価については、どこで役務が行われたかが重要です。

 一方、日本国内で業務を行う者が、その国内業務に関して日本で作業をする非居住者等へ支払う著作権の使用料は、国内源泉所得として別に扱われます。

 したがって、「クリエイターは海外で作業したから日本の源泉徴収は一切不要」と一括して判断せず、制作報酬と著作権使用料を分けて確認します。

3.著作権使用料に該当する場合、国内法の税率は原則20.42%です

 このページの前提に該当する著作権等の使用料を非居住者へ支払う場合、国内法では原則として20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)の源泉徴収を検討します。

 ただし、相手の居住地国との租税条約により、これより低い限度税率または免税が定められている場合があります。

4.租税条約を適用すると、相手国によって0%・5%・10%・15%などに変わります

 著作権使用料の限度税率は国ごとに異なります。

 アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スペインなどは免税、オーストラリア・ニュージーランドなどは5%、カナダ・韓国・台湾・シンガポールなどは10%、タイ・ペルーなどは15%と整理されています。

 具体的な国別税率は「19.国別・著作権使用料の租税条約上の限度税率」に掲載します。

5.税率は国籍ではなく「租税条約上の居住地国」を確認します

 例えば米国籍のクリエイターであっても、実際の租税条約上の居住地国が別の国であれば、単に国籍だけで日米租税条約の税率を適用することはできません。

 契約時には、住所、居住地国、必要に応じて居住者証明書等を確認し、どの租税条約を適用するのかを整理します。

6.租税条約の軽減・免税を受けるには、原則として支払前の届出が必要です

 使用料について租税条約の軽減・免税を受ける場合には、原則として「租税条約に関する届出書(使用料に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除:様式3)」を、最初の支払日の前日までに支払者を経由して所轄税務署長へ提出します。

 支払前に必要な届出をしていない場合は、国内法の税率で源泉徴収し、後日、所定の還付手続を検討することになります。

7.特典条項がある条約では、追加書類が必要になる場合があります

 適用する租税条約に特典条項があり、その対象となる所得について軽減・免税を受ける場合には、届出書に加えて「特典条項に関する付表(様式17)」や居住者証明書等が必要になる場合があります。

 相手国・条約ごとに必要書類が異なるため、税率だけでなく手続要件まで確認します。

8.条約の限度税率を適用する場合、通常その税率に復興特別所得税2.1%を上乗せしません

 租税条約の規定により、国内法に規定する税率以下の限度税率が適用される場合には、復興特別所得税を併せて源泉徴収する必要はありません。

 したがって、添付資料で限度税率10%の国について、原則として「10%×1.021=10.21%」とするのではなく、条約上の限度税率10%を前提に検討します。

9.契約書・見積書・請求書で、制作報酬と利用許諾対価をできるだけ明確にします

 ゲーム制作では、制作作業と著作権利用許諾が一つの契約に含まれることが少なくありません。

 税務上の判定を行いやすくするため、実態に応じて制作報酬、著作権使用料、実装費、テスト費などの内容と対価を明確にしておくことが重要です。

 ただし、形式的に金額を分けただけでは足りず、契約内容、利用範囲、対価の算定方法、実際の取引内容が一致している必要があります。

 具体的な契約条項の作成・審査は弁護士にご相談ください。

▲ 目次へ戻る

1.ゲーム企画・ゲームデザイン

 著作物・権利:企画書、仕様書、フローチャート等に具体的で創作的な文章・図・画像表現が含まれる場合には、それらの表現部分について著作権が問題になる可能性があります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 ゲームの基本コンセプト、遊び方、戦闘システム、成長方式、ステージ構成、ゲームサイクル等の設計を依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 企画書、仕様書、フローチャート等に具体的で創作的な文章・図・画像表現が含まれる場合には、それらの表現部分について著作権が問題になる可能性があります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 抽象的なアイデア、ゲームルール、計算方法、数値パラメータの提示や、既に決まった仕様を機械的に入力するだけの作業は、著作物の利用許諾とは分けて考えます。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 企画・アイデアそのものと、企画書等の具体的な表現は区別します。

 利用許諾の対象が何かを契約上整理することが重要です。

▲ 目次へ戻る

2.シナリオ・脚本・プロット・台詞

 著作物・権利:具体的なストーリー、台詞、人物設定、世界観等を創作的に文章化した部分は著作物となり得ます。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 メインストーリー、イベントシナリオ、キャラクターの台詞、プロット、人物設定、世界観等の文章制作を海外ライターへ依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 具体的なストーリー、台詞、人物設定、世界観等を創作的に文章化した部分は著作物となり得ます。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 単なる事実確認、誤字修正、指定された文章の機械的な入力など、創作的な文章を新たに作成しない作業は、シナリオ著作物の利用許諾とは区別します。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 続編、DLC、翻訳版、ボイス収録、PV等へ利用する範囲が広いほど、利用許諾の対象と範囲を明確にしておく必要があります。

▲ 目次へ戻る

3.キャラクターデザイン・イラスト・背景

 著作物・権利:キャラクターの外見、衣装、装備、表情、構図、色彩、背景等についてクリエイターが創作的な表現を行った場合、その表現について著作権が問題になります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 キャラクターデザイン、立ち絵、スチル、背景美術、キーアート等を海外イラストレーターへ依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 キャラクターの外見、衣装、装備、表情、構図、色彩、背景等についてクリエイターが創作的な表現を行った場合、その表現について著作権が問題になります。

 そのうえで、著作権などをクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 完成済み画像を指定サイズへ縮小する、ファイル形式を変換する、指定位置で機械的に切り抜く等の作業は、新たなイラストを創作する仕事とは分けて考えます。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 ゲーム本編だけでなく、DLC、続編、海外版、3D化、PV、広告、SNS、グッズ等への利用を予定する場合には、どの利用が許諾対象かを整理します。

▲ 目次へ戻る

4.ロゴ・アイコン・UIグラフィック

 著作物・権利:ゲームタイトルのロゴ、オリジナルアイコン、ボタン、ウィンドウ、画面装飾等に創作性がある場合には著作権が問題になります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。

 租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 タイトルロゴ、メニュー画面、UIパーツ、アイコン、HUD等のデザイン制作を海外クリエイターへ依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 ゲームタイトルのロゴ、オリジナルアイコン、ボタン、ウィンドウ、画面装飾等に創作性がある場合には著作権が問題になります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 ゲーム会社が完成済みの画像・レイアウトを用意し、外注先がUnity等の指定位置へ実装するだけの作業は、デザイン著作物の利用許諾とは区別します。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 「UIデザイン」と「Unity実装」を同じ人へ依頼する場合は、制作・利用許諾・実装の各対価が混在しやすいため、業務内容を整理しておくと税務判定がしやすくなります。

▲ 目次へ戻る

5.3Dモデリング

 著作物・権利:3D制作者が形状、造形、装飾、質感等について新たな創作的表現を加えた場合、その表現について著作権が問題になる可能性があります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 キャラクター、背景、武器、アイテム等の3Dモデルを海外の3Dクリエイターへ制作依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 3D制作者が形状、造形、装飾、質感等について新たな創作的表現を加えた場合、その表現について著作権が問題になる可能性があります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 完成済み3Dデータを別形式へ変換するだけの作業や、ゲーム会社の細かな指示どおりに技術的処理を行うだけの部分は、創作的な3D表現の利用許諾とは区別します。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 既存の2Dキャラクターを3D化する場合には、元の2D作品の権利と3D制作者が新たに加えた表現の権利を分けて確認します。

 具体的な権利処理は弁護士にご相談ください。

▲ 目次へ戻る

6.リギング・スキニング

 著作物・権利:ボーンやウェイトの技術的設定だけであれば、新たな著作物が生じるとは限りません。

 ただし、独自のスクリプト、ツール、制御プログラム等を制作する場合は、その部分について権利が問題になることがあります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 既存の3Dモデルにボーンを設定し、関節の動きやウェイトを調整してアニメーション可能な状態にする仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 ボーンやウェイトの技術的設定だけであれば、新たな著作物が生じるとは限りません。

 ただし、独自のスクリプト、ツール、制御プログラム等を制作する場合は、その部分について権利が問題になることがあります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 仕様書に従った技術的設定のみで、利用許諾の対象となる独自の著作物を制作していない場合には、著作権使用料は発生しません。

 また、海外で行われた制作役務の対価は著作権の使用料には該当しませんが、著作物を利用する権利の対価は著作権の使用料に該当します。

 その判断に当たっては、契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 独自ツールやスクリプトを継続利用する許諾を受ける場合は、その部分だけが使用料として問題になる可能性があります。

▲ 目次へ戻る

7.モーション・アニメーション

 著作物・権利:構え、溜め、攻撃、表情、演出、タイミング等を組み合わせた創作的な動作・映像表現については、著作権等が問題になる可能性があります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 キャラクターの歩行、攻撃、必殺技、表情、イベント演出等のモーション・アニメーションを海外クリエイターへ依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 構え、溜め、攻撃、表情、演出、タイミング等を組み合わせた創作的な動作・映像表現については、著作権等が問題になる可能性があります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 既存モーションを指定キャラクターへ割り当てるだけの作業や、単純なデータ変換等は、創作的なモーション表現の利用許諾とは区別します。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

▲ 目次へ戻る

8.VFX・エフェクト

 著作物・権利:魔法、炎、爆発、光等について形状、色彩、動き、タイミング等を組み合わせた独自の視覚表現には、著作権が問題になる可能性があります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 攻撃エフェクト、魔法、環境効果、パーティクル等を海外VFXクリエイターへ制作依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 魔法、炎、爆発、光等について形状、色彩、動き、タイミング等を組み合わせた独自の視覚表現には、著作権が問題になる可能性があります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 市販アセットの数値を指定どおり変更するだけの作業や、単純な実装・調整作業は、独自のVFX著作物の利用許諾とは区別します。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 市販アセットや第三者素材を含む場合、外注先自身の権利と第三者素材のライセンスは別問題です。

 第三者ライセンスの解釈は必要に応じて弁護士に確認してください。

▲ 目次へ戻る

9.ゲームプログラミング

 著作物・権利:創作性のある具体的なプログラムコードには、プログラム著作物として著作権が生じ得ます。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。

 租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 ゲームロジック、戦闘システム、AI、UI制御、ネットワーク処理、ツール等のプログラムを海外プログラマーへ依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 創作性のある具体的なプログラムコードには、プログラム著作物として著作権が生じ得ます。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 単にプログラムを制作して納品する役務の対価と、そのプログラム著作物を日本のゲーム会社が継続利用・複製・改変等する権利の対価は分けて検討します。

 プログラムに著作権があるという理由だけで、制作費全額を使用料とするものではありません。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 外注先の既存コード、OSS、外部ライブラリ、開発ツールを含む場合には、権利主体と利用条件が混在します。

 どの部分について外注先から利用許諾を受けるのかを整理します。

▲ 目次へ戻る

10.BGM・作曲・編曲

 著作物・権利:ゲーム専用のオリジナルBGM等を作曲した場合、その楽曲について著作権が問題になります。

 既存曲の編曲では元の楽曲と編曲部分の双方の権利が関係する場合があります。

 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 タイトル曲、ステージBGM、戦闘曲、ジングル等の作曲・編曲を海外作曲家へ依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 ゲーム専用のオリジナルBGM等を作曲した場合、その楽曲について著作権が問題になります。

 既存曲の編曲では元の楽曲と編曲部分の双方の権利が関係する場合があります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 録音・ミックス等の技術作業だけを依頼する部分と、楽曲そのものを制作・利用許諾してもらう部分は分けて確認します。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 ゲーム本編、DLC、続編、PV、サウンドトラック、動画配信、イベント等へ利用する場合には、利用範囲が広くなります。

 著作権使用料としての課税関係を確認すべき代表的な分野です。

▲ 目次へ戻る

11.効果音・録音・ミックス

 著作物・権利:一から独自の効果音を制作した場合や複数素材を創作的に加工・構成した場合には、著作権や録音物に関する権利が問題になることがあります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 攻撃音、環境音、UI音、録音、編集、ミックス等を海外サウンドクリエイターへ依頼する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 一から独自の効果音を制作した場合や複数素材を創作的に加工・構成した場合には、著作権や録音物に関する権利が問題になることがあります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 ゲーム会社が所有する完成音源の音量を調整するだけの作業など、技術的な録音・編集作業のみの場合は、著作権使用料とは分けて考えます。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 第三者の音源ライブラリやサンプルを使用している場合には、そのライセンス条件と外注先自身の権利を区別します。

▲ 目次へ戻る

12.声優・ナレーション

 著作物・権利:声優がシナリオの著作者になるわけではありませんが、実演家の権利等が問題になる場合があります。
 本ページの税務前提:録音された実演等の利用許諾対価が、適用法令・租税条約上、著作権等の使用料として扱われる部分を対象とします。
 注意:純粋な出演・実演報酬は、著作権使用料とは別の国内源泉所得・租税条約条項が問題になる可能性があるため、一律に本ページの税率表を当てはめません。

どのような仕事ですか?

 キャラクターボイス、ナレーション、掛け声等を海外の声優・ナレーターへ収録依頼する仕事です。

利用許諾の対価がある場合

 収録した音声をゲーム本編、DLC、続編、PV、広告、SNS動画、イベント等で利用する場合、実演家の権利等について利用許諾が必要となることがあります。

 その利用許諾の対価が税務上どの所得区分に該当するかを確認します。

出演報酬と混同しない

 声優・ナレーターへの支払いは、収録作業そのものへの出演・実演報酬と、録音物・実演等の利用許諾対価が混在する可能性があります。

 出演・実演報酬には、著作権使用料とは別の源泉徴収ルールや租税条約上の芸能人条項等が関係する場合があります。

 したがって、この項目だけは「海外クリエイターへの支払い=著作権使用料」と単純化せず、契約内容を個別に確認してください。

▲ 目次へ戻る

13.翻訳・ローカライズ

 著作物・権利:創作性のある翻訳文は、原著作物を基礎とする二次的著作物として権利が問題になる場合があります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 日本語シナリオ、UI、ストア説明、字幕等を英語、中国語、韓国語その他の言語へ翻訳・ローカライズする仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 創作性のある翻訳文は、原著作物を基礎とする二次的著作物として権利が問題になる場合があります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 単純な文字列置換、機械翻訳結果の形式調整、表示確認だけの作業は、創作的な翻訳文の利用許諾とは区別します。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 翻訳者が作成した翻訳文をゲーム本編、DLC、続編、ストアページ、PV、広告等へ継続利用する場合には、翻訳文の利用許諾対価があるかを確認します。

▲ 目次へ戻る

14.翻訳チェック・校正・LQA

 著作物・権利:不自然な翻訳を創作的に書き直す部分には著作権が問題になる可能性がありますが、表示・動作確認のみの部分とは性質が異なります。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 ゲームをプレイしながら翻訳文の自然さ、キャラクターらしい表現、誤訳、文字切れ、表示崩れ等を確認する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 不自然な翻訳を創作的に書き直す部分には著作権が問題になる可能性がありますが、表示・動作確認のみの部分とは性質が異なります。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 文字がウィンドウからはみ出している箇所を報告する、動作不具合を記録する等のテスト作業は、翻訳著作物の利用許諾とは区別します。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 「LQA一式」では内容が分かりにくいため、翻訳・リライト・校正と、表示確認・動作確認を分け、さらに翻訳文の利用許諾対価がある場合はその関係も整理すると税務判断がしやすくなります。

▲ 目次へ戻る

15.デバッグ・QA・テストプレイ

 著作物・権利:通常のバグ発見・動作確認だけでは、ゲーム本体について新たな著作権が生じるとは通常考えにくく、著作権使用料が中心問題になる場面は限定的です。
 本ページの税務前提:クリエイター側に著作権等が残り、日本のゲーム会社が利用許諾を受け、その対価の全部または一部が著作権使用料に該当する場合を扱います。
 源泉徴収:著作権使用料に該当する部分は、国内法では原則20.42%。租税条約を適用できる場合は相手国の限度税率または免税を検討します。

どのような仕事ですか?

 ゲームを実際に操作し、バグ、クラッシュ、表示崩れ、操作性等を確認して報告する仕事です。

著作権使用料として検討する場面

 通常のバグ発見・動作確認だけでは、ゲーム本体について新たな著作権が生じるとは通常考えにくく、著作権使用料が中心問題になる場面は限定的です。

 そのうえで、著作権等をクリエイター側に残したまま、日本のゲーム会社がゲーム本編、DLC、移植版、海外版、PV、広告、ストアページ等で継続的に利用する許諾を受け、その利用の対価が設定されている場合には、著作権使用料としての源泉徴収を検討します。

制作報酬・技術作業と区別する場面

 通常のテストプレイやバグ報告は人的役務の対価として整理されるのが基本であり、著作権使用料を当然に想定する仕事ではありません。

 海外で行われた制作役務の対価と、著作物を利用する権利の対価は税務上同じとは限りません。

 契約書・見積書・請求書等の名称だけでなく、実際の権利関係と対価の内容を確認します。

この作業で特に注意する点

 ただし、外注先が独自の自動テストツール、解析プログラム、テストシナリオ等を制作し、その著作物を日本のゲーム会社が継続利用する許諾を受ける場合には、その利用許諾対価を別途検討します。

▲ 目次へ戻る

16.一人に複数の作業を依頼する場合

 ゲーム開発では、一人の海外クリエイターへ、性質の異なる作業をまとめて依頼することがあります。

UIデザイン+Unity実装

翻訳+LQA

キャラクターデザイン+3Dモデリング

BGM作曲+録音・ミックス

プログラム制作+既存汎用コードの利用許諾

 この場合、「Game development fee USD 3,000」だけでは、何に対する対価なのか判断しにくくなります。

制作役務と著作権使用料を整理する例

例:海外イラストレーターへの支払い
キャラクターデザイン制作報酬 USD 1,500
著作権利用許諾料       USD 500

 上記のように合理的な根拠に基づいて区分され、実際の契約内容もその区分に対応している場合には、制作役務の対価と著作権使用料をそれぞれの性質から検討しやすくなります。

 ただし、金額を形式的に分ければよいわけではありません。

 権利の利用範囲、対価の算定根拠、契約・請求・実際の支払内容が一致していることが重要です。

海外で行われた制作役務との違い

 海外クリエイターが国外で行った制作作業の対価は、国内で行われた人的役務とは異なる取扱いとなる一方、日本のゲーム会社が国内業務で著作物を利用するために支払う使用料は、国内源泉所得として別に検討します。

 この区別が海外編の中心です。

▲ 目次へ戻る

17.海外クリエイターとの契約で確認したい事項

 以下は、著作権使用料の源泉徴収を判断するために把握しておきたい一般的な事項です。

 具体的な契約書の作成・審査、準拠法、権利帰属、ライセンス範囲の法的評価は弁護士にご相談ください。

制作内容を具体的にする

 「ゲーム制作一式」ではなく、キャラクターデザイン、シナリオ、BGM、翻訳、プログラミング、実装、LQA等、実際の作業を明確にします。

誰が権利を保有するのかを確認する

 海外クリエイターが制作した成果物について、誰が著作権等を保有し、日本のゲーム会社はどの権利を利用するのかを確認します。

 外国法が関係するため、日本法だけを前提に権利帰属を断定しません。

利用許諾の対象を明確にする

 ゲーム本編、Steam等のストア、コンソール移植、DLC、続編、リメイク、翻訳版、PV、広告、SNS、配信動画、サウンドトラック等、どの利用を許諾対象とするか整理します。

期間・媒体を確認する

 契約期間は限定されるのか、PC・コンソール・モバイル等どの媒体を含むのかを確認します。

制作報酬と利用許諾対価を区分する

 制作役務の報酬と著作権使用料が混在する場合、実態に即して対価を区分できるか検討します。

 名称だけの形式的区分ではなく、契約内容と金額の合理性が重要です。

第三者素材を確認する

 Asset Store、フォント、写真、音源、OSS、既存コード等が含まれる場合、海外クリエイター自身が許諾できる権利と第三者の権利を分けます。

相手の居住地国を確認する

 租税条約上の限度税率は相手の居住地国によって異なります。

 住所・税務上の居住地国を確認し、必要に応じて居住者証明書等を準備します。

支払前に租税条約手続を確認する

 免税・軽減を適用する場合は、原則として最初の支払日の前日までに使用料用の租税条約届出書を提出します。

 特典条項がある条約の国では追加書類が必要な場合があります。

▲ 目次へ戻る

18.国内法の税率と租税条約の適用手続

1.租税条約を適用しない場合

 日本のゲーム会社が国内業務のために非居住者から著作権等の利用許諾を受け、その対価が国内源泉所得となる著作権使用料に該当する場合、国内法では原則20.42%の源泉徴収を検討します。

国内法の原則税率:20.42%
(所得税20%+復興特別所得税0.42%)

2.租税条約を適用する場合

 相手の居住地国との租税条約が著作権使用料について日本の課税を制限している場合、所定の要件・手続を満たすことにより、添付資料に記載された限度税率または免税を検討します。

アメリカ:免税

イギリス:免税

ドイツ:免税

フランス:免税

オーストラリア:5%

ニュージーランド:5%

カナダ:10%

韓国:10%

台湾:10%

シンガポール:10%

ブラジル:12.5%

タイ:15%

 上記は代表例です。全83対象国の税率は次章に掲載します。

3.復興特別所得税の取扱い

 租税条約の適用により、国内法の税率以下の限度税率が適用される場合には、復興特別所得税を併せて源泉徴収する必要はありません。

 したがって、条約上10%である場合に10.21%とするのではなく、条約上の限度税率10%を前提に検討します。

4.使用料の租税条約届出書

 著作権等の使用料について租税条約による軽減・免税を受ける場合は、「租税条約に関する届出書(使用料に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)」を使用します。

 原則として、海外クリエイターが支払者ごとに届出書を作成し、最初の使用料の支払を受ける日の前日までに、日本のゲーム会社を経由して、そのゲーム会社の納税地の所轄税務署長へ提出します。

5.支払前に届出ができなかった場合

 支払日の前日までに必要な届出書等が提出されていない場合、支払者は原則として国内法の税率により源泉徴収します。

 その後、届出書と「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を支払者経由で提出し、差額の還付を求める手続があります。

6.特典条項がある場合

 適用する条約の使用料条項が特典条項の対象となる場合には、使用料の届出書に加えて「特典条項に関する付表(様式17)」および居住者証明書等が必要になる場合があります。

 必要書類は条約締結国ごとに確認します。

7.納付

 国内で支払う使用料等から源泉徴収した税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。

 この場合、年2回の納付としている源泉所得税の納期の特例は適用されませんので、注意が必要です。

 非居住者・外国法人用の所得税徴収高計算書では、著作権の使用料又は譲渡の対価は区分コード12として案内されています。

▲ 目次へ戻る

19.国別・著作権使用料の租税条約上の限度税率

 以下は、2026年1月1日現在の租税条約適用による著作権使用料の税率(支払が日本→海外の場合)です。

 ここでいう「免税」は、表上の限度税率が0%であることを示します。

 ただし、税率表だけで条約適用が確定するわけではありません。

 実際の支払時には、相手が条約上の居住者・受益者等の要件を満たすか、対象所得が条約上の「使用料」に該当するか、届出書・居住者証明書等の手続要件を満たすかを確認してください。

No.対象国名限度税率
1アイスランド免税
2アイルランド10%
3アゼルバイジャン7%
4アメリカ免税
5アラブ首長国連邦10%
6アルジェリア10%
7アルゼンチン条約未発効
8アルメニア5%
9イギリス免税
10イスラエル10%
11イタリア10%
12インド10%
13インドネシア10%
14ウクライナ5%
15ウズベキスタン免税
16ウルグアイ10%
17エクアドル10%
18エジプト15%
19エストニア5%
20オーストラリア5%
21オーストリア免税
22オマーン10%
23オランダ免税
24カザフスタン10%
25カタール5%
26カナダ10%
27韓国10%
28ギリシャ5%
29キルギス免税
30クウェート10%
31クロアチア5%
32コロンビア10%
33サウジアラビア10%
34ザンビア10%
35ジャマイカ10%
36ジョージア免税
37シンガポール10%
38スイス免税
39スウェーデン免税
40スペイン免税
41スリランカ免税
42スロバキア免税
43スロベニア5%
44セルビア5%
45タイ15%
46台湾10%
47タジキスタン免税
48チェコ免税
49中華人民共和国10%
50チリ10%
51デンマーク免税
52ドイツ免税
53トルクメニスタン10%
54トルコ10%
55ニュージーランド5%
56ノルウェー10%
57パキスタン10%
58ハンガリー免税
59バングラデシュ10%
60フィジー10%
61フィリピン10%
62フィンランド10%
63ブラジル12.5%
64フランス免税
65ブルガリア10%
66ブルネイ10%
67ペルー15%
68ベトナム10%
69ベラルーシ免税
70ベルギー免税
71ポーランド免税
72ポルトガル5%
73香港5%
74マレーシア10%
75南アフリカ10%
76メキシコ10%
77モルドバ免税
78モロッコ10%
79ラトビア免税
80リトアニア免税
81ルクセンブルク10%
82ルーマニア10%
83ロシア条約停止中

※「アルゼンチン:条約未発効」、「ロシア:条約停止中」は、2026年1月1日現在の状況です。

 実際の支払時点で条約の発効・停止状況が変わっている可能性があるため、必ず最新情報を確認してください。

※この一覧は著作権使用料についての限度税率を整理したものであり、特許権など工業所有権の場合は税率が異なる場合があります。

▲ 目次へ戻る

20.よくある質問

Q.海外のイラストレーターに制作費を払うだけで20.42%源泉徴収するのですか?

 いいえ。

 海外で行われた制作役務の対価と、日本のゲーム会社が著作物を利用する対価とを分け、著作権使用料部分に国別の租税条約を適用することによる源泉所得税の免税や税率の軽減を検討します。

Q.契約書に「著作権は海外クリエイターに残る」と書いてあれば、必ず使用料になりますか?

 必ずとは限りません。

 権利がクリエイター側に残ることに加え、日本のゲーム会社がどの利用権を得るのか、その対価がどのように定められているかなど、契約と取引の実態を確認します。

Q.海外で作業してもらったので、日本では源泉徴収不要ではないですか?

 制作役務については作業場所が重要ですが、海外クリエイターへの著作権使用料の支払いは源泉徴収が必要となる国内源泉所得となり得ます。

 これは、著作権使用料の支払者としての日本のゲーム会社の居住国を重視している制度だからです。

 これを、債務者主義といいます。

 これにより、単に「海外作業=すべて源泉徴収なし」とは判断しません。

Q.米国在住のクリエイターへの著作権使用料は何%ですか?

 2026年1月1日現在の税率表では、アメリカの著作権使用料は免税です。

 ただし、実際に日米租税条約の適用要件を満たし、必要な届出を行うことが前提です。

Q.カナダ在住の場合は?

 税率表では10%です。

 租税条約を適用するための要件・届出を確認したうえで適用します。

Q.租税条約10%の場合、復興特別所得税を加えて10.21%ですか?

 租税条約により国内法以下の限度税率が適用される場合、復興特別所得税を併せて源泉徴収する必要はありません。

Q.租税条約届出書を出し忘れて支払ってしまいました。

 支払前に届出書等が提出されていなければ、原則として国内法の税率20.42%で源泉徴収します。

 その後、所定の届出書と還付請求書を支払者経由で提出して差額還付を求める手続があります。

Q.プログラム制作費はすべて著作権使用料ですか?

 いいえ。

 プログラムコードが著作物になり得ることと、制作費全額が著作権使用料になることは別問題です。

 制作役務の対価と、既存コードや成果物を利用する権利の対価を区別します。

Q.税率表に「免税」とあれば、何もしなくてよいですか?

いいえ。

 免税を受けるために租税条約届出書等が必要となるのが原則です。

 租税条約の締結国によっては特典条項に関する付表や居住者証明書等も確認します。

▲ 目次へ戻る

21.まとめ

 日本のゲーム会社が海外の個人・法人クリエイターへ外注するときは、「海外へ支払う外注費」という一つの括りで源泉徴収を判断しないことが重要です。

 まず、海外で行われた制作役務の対価と、完成した著作物・プログラム・楽曲・翻訳文等を日本のゲーム会社が利用するための対価を分けます。

 支払額の全部または一部が著作権等の使用料に該当し、日本のゲーム会社の国内業務に係る国内源泉所得となる場合には、国内法では原則20.42%の源泉徴収を検討します。

 そのうえで相手の租税条約上の居住地国を確認し、租税条約を適用できる場合は、国ごとの限度税率または免税を検討します。

 適用税率は、0%(免税)、5%、7%、10%、12.5%、15%など国によって税率が異なります。

 租税条約の軽減・免税を受ける場合は、原則として最初の支払日の前日までに使用料用の租税条約届出書を提出し、条約によって必要となる付表・居住者証明書等も確認します。

海外クリエイターへの支払いで確認する順序
① 制作役務の対価か、著作権等の使用料か
② 使用料に該当する部分はいくらか
③ 相手の租税条約上の居住地国はどこか
④ 国内法20.42%と条約上の限度税率のどちらを適用するか
⑤ 支払前に必要な租税条約手続を完了しているか

 当事務所では、海外クリエイターへの支払いについて、源泉徴収の要否、著作権使用料に該当する部分の税務上の整理、租税条約の適用税率および届出手続を確認します。

 契約書の作成・審査、権利帰属、準拠法、利用許諾条項の法的判断が必要な場合は弁護士への相談をご案内します。

※このページは、日本のゲーム会社が海外の個人クリエイターへ支払いを行う場合について、著作権等の使用料の源泉徴収と租税条約を中心に一般的な情報を整理したものです。

 個別取引では、契約内容、相手国、支払内容、権利の利用方法等により結論が異なる場合があります。

▲ 目次へ戻る

参考資料

国税庁 No.2878「国内源泉所得の範囲」

国税庁 No.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」

国税庁「租税条約に関する届出(使用料に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)」

国税庁 No.2507「復興特別所得税の源泉徴収」

国税庁「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書の記載のしかた」

国税庁 法人税基本通達20-3-3「使用料の意義」

▲ 目次へ戻る