カナダ国内法では、日本のゲーム会社がカナダのゲームパブリッシャーから受け取るカナダ源泉の著作権使用料は、原則として25%の源泉徴収税の対象となり得ます。
日加租税条約第12条などの要件を満たす場合、カナダの源泉税率は著作権使用料の総額の10%となる可能性があります。
日本法人は、通常、支払前にNR301を作成してカナダの支払者へ提出します。NR301をカナダ歳入庁(CRA)へ直接送付するものではありません。
NR301は、実質的受益者、租税条約上の居住地および条約特典を受ける資格を確認する書類です。支払者が居住者証明書、契約書または請求書などの補足資料を求めることがあります。
- このページの対象
- 結論と源泉税10%の考え方
- 条約適用の主な要件
- 準備する書類
- NR301の提出先と記載項目
- NR301の有効期間と変更時の対応
- 居住者証明書
- 契約書・請求書の確認事項
- 支払前の実務手順
- カナダからの銀行送金
- よくある誤り
- よくある質問
- 当事務所の対応サポート
このページでは、日本法人であるゲーム開発会社が、自社ゲームの著作権を保有したまま、カナダのゲームパブリッシャーへカナダ国内での出版・配信等の権利を許諾し、その対価として著作権使用料を受け取る場合を整理します。
契約書の名称が「Publishing Agreement」「License Agreement」「Royalty Fee」であっても、税務上の所得区分は名称だけでは決まりません。
許諾する権利、利用地域、利用期間、対価の計算方法など、契約内容の実質を確認します。
このページの対象は、カナダのゲームパブリッシャーから著作権使用料を受け取る日本法人です
想定する取引は、日本のゲーム会社が自社ゲームの著作権を保有したまま、カナダのゲームパブリッシャーへカナダ国内での複製、出版、販売促進、配信、公衆提供等の権利を許諾し、売上連動または契約で定めた方法によりロイヤリティを受け取るものです。
結論:日加租税条約の要件を満たせば、カナダの源泉税率は10%になり得ます
カナダの国内法では、非居住者に支払われる一定の使用料は、原則として総額の25%が源泉徴収税の対象となります。
一方、日加租税条約第12条第2項は、カナダで生じる使用料の実質的受益者が日本の居住者である場合、カナダで課される税を使用料総額の10%以下としています。
このため、支払が条約上の使用料に該当し、受取人が日本の居住者かつ実質的受益者であり、その他の条約要件を満たす場合、カナダ側の源泉税率は10%となる可能性があります。
| 所得の区分 | 条約適用前 | 条約適用後 | 主な根拠 |
| ゲームの出版・配信権の許諾に係る著作権使用料 | 原則25% | 10% | 日加租税条約 第12条第2項 |
ここでいう10%は、カナダにおける源泉徴収税率です。受領した著作権使用料は、日本法人の法人税申告に反映します。
契約書に「Royalty Fee」と記載されているだけで、必ず条約上の使用料に該当するわけではありません。ゲーム名、著作権者、許諾する権利、許諾地域、許諾期間、使用料の算定方法など、契約内容の実質を確認します。
日加租税条約の10%を受けるために確認する主な要件
条約税率10%は自動的に適用されるものではありません。
少なくとも、次の事項を確認します。
- 受取人が日加租税条約上の日本の居住者であること
- 受取人が使用料の実質的受益者であり、単なる代理人、名義人または資金のパススルーではないこと
- 支払の実質が、ゲームの著作権に基づく複製、出版、配信その他の利用許諾の対価であること
- 支払者が必要とするNR301または同等の情報を、支払前に提出すること
カナダの支払者は、受取人が実質的受益者であり、日本の租税条約上の居住者で、条約特典を受ける資格があることを確認できる資料を保管します。
通常はNR301を使用しますが、CRAは、NR301と同等の情報を署名付きの別書式で提出する方法も認めています。
実務では、支払者が指定する書式と追加資料の有無を確認します。
| 書類 | 日本法人の対応 | 提出・保管先 | 位置付け |
| NR301 | 作成・署名・送付 | カナダの支払者が保管 | 基本書類 |
| 居住者証明書 | 日本の税務署へ交付請求 | 支払者・銀行等が求めた場合 | 居住性の補足資料 |
| ゲーム配信契約書の写し | ゲーム名・権利・地域・期間・算定方法を確認 | 支払者・銀行等が求めた場合 | 所得区分・権利範囲の確認資料 |
| 請求書の写し | ゲーム名・契約番号・対象期間・金額を確認 | 支払者・銀行等が求めた場合 | 送金目的の確認資料 |
| NR4スリップ | 支払後に受領内容を確認・保存 | カナダの支払者が作成 | 支払額・源泉税額の記録 |
提出先の整理:通常の手続では、NR301はCRAへ直接送付しません。
日本法人が作成してカナダの支払者、代理人または金融仲介者へ提出し、その相手方が保管します。
NR301は日本法人が作成し、カナダの支払者へ提出します
NR301は、非居住者が、カナダと租税条約を締結している国の居住者であり、一定の所得について条約上の軽減税率または免税を受ける資格があることを申告する書類です。
ゲームの著作権使用料を受け取る通常の日本法人は、事実関係に応じて次の項目を記載します。
Part 1からPart 6:日本法人の基本情報
- Part 1:法人の正式な英文名称
- Part 2:郵送先住所、都道府県、郵便番号、国名
- Part 3:Foreign tax identification numberとして日本の13桁の法人番号
- Part 4:Recipient typeとしてCorporationを選択
- Part 5:カナダのBusiness Numberを保有している場合に記載し、保有していない場合は空欄
- Part 6:Country of residence for treaty purposesとしてJapanを記載
Part 7:条約特典を申告する所得の種類
ゲームの出版・配信権の許諾に係る著作権使用料については、通常、「Interest, dividends, and/or royalties」を選択します。
NR301には、条約の条文番号や10%の税率を直接記載する欄はありません。
支払者は、NR301の申告内容、契約書その他の資料を基に、日加租税条約第12条の適用と源泉税率を判断します。
Part 8:Certification and undertaking
- 記載した情報が正確かつ完全であること
- 日本法人が本フォームの対象となる所得の実質的受益者であること
- Part 6の国とカナダとの租税条約に基づき、Part 7の所得について条約特典を受ける資格があること
- 記載内容に変更が生じた場合、提出先へ直ちに通知すること
法人を代表して署名する権限がある者が、署名、氏名、役職、電話番号および日付を記載します。
スキャンした署名済み書類や、本人が電子端末上で行った電子署名を支払者が受け付けることもありますが、相手先の提出方法を確認します。
NR301の有効期間と変更時の対応
Part XIII源泉徴収の目的では、NR301は、条約特典を受ける資格に変更が生じた日または署名した暦年の末日から3年後のいずれか早い時点で失効します。
たとえば、2026年中に署名したNR301は、事情変更がなければ原則として2029年12月31日まで有効です。
会社名、所在地、法人形態、租税条約上の居住地、実質的受益者性、契約内容などに変更が生じ、記載内容が正しくなくなった場合は、支払者へ直ちに通知し、新しいNR301を提出します。
カナダの支払者が独自の更新期限を設ける場合もあります。
また、支払者は、NR301その他の資料を、関係する最後の課税年度の末日から6年間保存することがCRAから推奨されています。
居住者証明書は、日本法人が日加租税条約上の日本の居住者であることを、日本の税務署が証明する書類です。
NR301に必要事項を記載する手続だけで処理されることもあり、居住者証明書が常に必須とは限りません。
ただし、カナダの支払者、取引銀行、社内監査部門などから追加資料として求められることがあります。
- 国税庁の「居住者証明書交付請求書・居住者証明書(租税条約等締結国用)」を取得する
- 法人名、代表者名、所在地、提出先国(Canada)などを日本語と英語で記載する
- 国税庁様式を使用する場合は、居住者証明書2部および交付請求書を所轄税務署の管理運営部門へ提出する
- 代理人が請求する場合は委任状を添付する
- 郵送の場合は、封筒に「居住者証明請求在中」と記載し、切手を貼った返信用封筒を同封する
注意:居住者証明書の発行には日数が掛かることがあり、追加資料の提出を求められる場合もあります。
固定的な所要日数を前提にせず、支払予定日から余裕を持って請求します。
契約書と請求書の記載は、NR301を前提とする所得区分と整合させます。少なくとも、次の項目を確認します。
- 対象ゲームの名称
- 著作権者および著作権の帰属
- カナダ国内で許諾する複製、出版、配信、公衆提供等の権利の範囲
- 許諾地域および許諾期間
- 著作権使用料の算定方法、支払時期および通貨
- 契約番号、請求対象期間および請求金額
契約書に「Royalty Fee」と書くだけでは十分ではありません。
ゲームの利用許諾の内容と対価の関係が分かるようにし、ゲームの売切り、著作権譲渡または役務提供の対価と区別します。
- ゲーム配信ライセンス契約書を確認し、支払が著作権使用料、著作権譲渡、ゲーム販売または役務提供のいずれに当たるかを判定する
- カナダのゲームパブリッシャーが求めるNR301、オンライン登録画面および追加資料を確認する
- 日本法人が条約上の日本の居住者かつ実質的受益者であることを確認する
- NR301を作成し、必要に応じて居住者証明書、ゲーム配信契約書、請求書その他の根拠資料を準備する
- 最初の使用料支払または入金処理の前に、NR301と求められた補足資料をカナダの支払者へ提出する
- 支払明細またはNR4スリップで源泉税率が10%となっているかを確認し、提出書類と判断根拠を保存する
- 有効期限および事情変更を管理し、必要に応じてNR301を更新する
カナダから日本へ送金が行われる場合、銀行または支払者から送金目的や取引内容を確認されることがあります。
- ゲーム配信ライセンス契約書
- 請求書
- NR301の写し
- 居住者証明書
- ゲーム名、契約番号、許諾地域、支払期間、使用料の計算根拠が分かる資料
- 受取人名、受取銀行名・支店名、口座番号、SWIFT/BICコード、通貨および送金目的
契約書、請求書、送金依頼およびNR301で、法人名、住所、金額、契約番号、支払目的の表現をできるだけ一致させておくと、確認が円滑になります。
- 契約書に「Royalty Fee」と書かれているだけで、支払を著作権使用料と判断する
- カナダ国内法の25%と日加租税条約の10%を区別せず、最初から10%が自動適用されると考える
- NR301をCRAへ直接送付する
- 居住者証明書、契約書および請求書を、すべての案件で法定の必須添付書類と考える
- NR301の提出後は、有効期限や事情変更を確認しない
- 支払後に書類を準備し、いったん25%を源泉徴収されてから対応する
Q1. カナダのゲームパブリッシャーから著作権使用料を受け取れば、必ず源泉税率10%ですか
いいえ。
受取人が日本の租税条約上の居住者であること、実質的受益者であること、支払が条約上の使用料であることなどを確認したうえで、支払者が必要とする情報を提出します。
Q2. NR301はCRAへ提出しますか
通常は提出しません。
日本法人からカナダの支払者、代理人または金融仲介者へ提出し、その相手方が保管します。
Q3. NR301の提出は法律上必ず必要ですか
NR301そのものは法定の指定様式ではなく、同等の情報を署名付きの別書式で提出することも認められています。
ただし、実務では支払者がNR301の提出を求めることが多いため、相手先の案内に従います。
Q4. 居住者証明書は必ず必要ですか
必ずしも必要ではありません。
NR301で処理されることもありますが、支払者や銀行が居住性の追加確認として求める場合があります。
Q5. NR301は毎年提出しますか
一般には毎年ではありません。
事情変更がなければ、署名した暦年の末日から3年後まで有効ですが、支払者が独自に再提出を求めることがあります。
Q6. 個人事業者もNR301を使いますか
個人であっても、カナダとの租税条約上の居住者で、対象所得について条約特典を受ける場合にはNR301を使用することがあります。
このページは日本法人を対象にしています。
三谷豊章税理士事務所では、日本のゲーム会社がカナダのゲームパブリッシャーから受け取る著作権使用料について、契約内容と所得区分の確認、日加租税条約の適用判定、NR301の記載支援、居住者証明書の取得支援および支払者からの質問への対応を行っています。
詳細なNR301の入力例、和訳、居住者証明書の作成手順、提出書類チェックリストおよび銀行送金情報は、「ゲーム配信許諾に係る著作権使用料に関する租税条約対応ガイド【カナダ編】」に収録しています。
三谷 豊章(税理士・三谷豊章税理士事務所)
名古屋国税局、税務大学校名古屋研修所、各税務署において約17年間、税法の解釈・適用に関する研修業務および納税者・税理士からの税務相談対応に従事。
2024年7月に名古屋西税務署を退職し、2024年10月に三谷豊章税理士事務所を開設。
最終更新日:2026年8月5日
- 日本・カナダ租税条約
- CRA:Form NR301
- CRA:Part XIII tax rates
- CRA:Beneficial ownership and tax treaty benefits
- CRA:More information on forms NR301, NR302 and NR303
- 国税庁:No.9210 居住者証明書の請求
このページは、日本法人がカナダのゲームパブリッシャーからゲームの出版・配信権等の許諾に係る著作権使用料を受け取る場合の一般的な情報を整理したものです。
契約内容、所得区分、権利の範囲、法人形態、実質的受益者、支払者の社内手続および金融機関の確認事項などにより取扱いは異なります。
個別案件の税務判断、カナダ法上の申告義務およびNR301以外の書類の要否については、事実関係に応じて日本およびカナダの専門家へ確認してください。
