スペイン国内法では、日本のゲーム会社がスペインのゲームパブリッシャーから受け取るスペイン源泉の著作権使用料は、原則として24%の源泉徴収対象です。
日本・スペイン租税条約第12条第1項の要件を満たす場合、スペインの源泉税は0%となる可能性があります。
日本法人は、支払前に日本の税務署が発行した居住者証明書その他の確認資料をスペインの支払者へ提供し、スペインの支払者が条約免税の適用可否を確認します。
この事例では、日本法人がスペイン税務当局へModelo 210を直接提出するのではなく、スペインの支払者がModelo 216およびModelo 296で必要な申告・報告を行います。
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このページは、日本法人であるゲーム開発会社が、自社ゲームの著作権を保有したまま、スペインのゲームパブリッシャーに対してスペイン国内でゲームを公衆送信および配信する権利を許諾し、その対価として著作権使用料を受け取る取引を対象にしています。
契約書の名称が「Publishing Agreement」「License Agreement」「Royalty Fee」であっても、税務上の所得区分は名称だけでは決まりません。
許諾する権利、利用地域、利用期間、対価の計算方法および実際の業務内容を確認します。
ゲームの完成品を売り切る取引、開発・移植・運営等の役務提供、スペイン国内の恒久的施設を通じて行う事業には、別の取扱いが必要となる場合があります。
結論:ゲーム配信許諾に係る著作権使用料は源泉税0%になり得ます
スペイン国内法上、日本法人などEU・アイスランド・ノルウェー等以外の非居住者に適用される一般税率は、原則として24%です。
一方、日本・スペイン租税条約第12条第1項は、スペインで生じ、日本の居住者が受益者である使用料について、日本だけで課税できることを定めています。
そのため、条約上の要件を満たす日本法人が受け取るスペイン源泉の著作権使用料は、スペインの源泉徴収税率が0%となり得ます。
ここでいう0%はスペインでの源泉税であり、受領した使用料収入は日本法人の日本の法人税申告に反映します。
実務では、最初の支払前に居住者証明書等をスペインの支払者へ提供し、支払者が免税処理と申告・報告を行える状態にしておくことが重要です。
| 所得の区分 | 条約適用前 | 条約適用後 | 主な根拠 |
| 著作権使用料 | 原則24% | 0%(免税) | 日本・スペイン租税条約 第12条第1項 |
源泉税0%は、契約書に「Royalty」と記載するだけで自動的に適用されるものではありません。
少なくとも、次の事項を確認します。
1. 受取人が日本・スペイン租税条約上の日本の居住者であること
日本法人が日本の税務上の居住者であることを、日本の所轄税務署が発行する居住者証明書で示します。
証明書には、日本・スペイン租税条約の意味における日本の居住者であることが記載されます。
2. 日本法人が使用料の受益者であること
日本法人が単なる代理人、名義人またはパススルーではなく、使用料を自己の収入として受け取り、自己のために保有・処分する者であることを確認します。
3. 支払の実質が著作権の使用または使用の権利の対価であること
日本法人がゲーム著作権を保有し、スペイン企業へ公衆送信、配信等の権利を許諾する取引であることを、契約書と請求書で確認します。
4. 使用料に関係する権利がスペインの恒久的施設と実質的な関連を有しないこと
日本法人がスペイン国内の恒久的施設を通じて事業を行い、その恒久的施設とゲーム著作権または使用料が実質的に関連する場合は、第12条第1項ではなく、事業利得に関する規定等の検討が必要です。
5. 有効な居住者証明書を支払前に提供すること
スペインで条約免税を適用する根拠資料として、条約上の居住者であることを明記した居住者証明書を支払者が保管できる状態にします。
スペインの公的案内では、証明書の有効期間は発行日から1年間です。
ゲームの著作権使用料の対価は、契約書の名称ではなく、取引の実質に基づいて区分します。
日本のゲーム会社が著作権を保有したまま、スペインのパブリッシャーへスペイン国内でゲームを利用する権利を与え、売上高、販売本数または契約で定めた計算方法により対価を受け取る場合は、著作権使用料に該当する可能性があります。
これに対し、完成したゲームの複製物を販売する取引、開発、移植、運営、マーケティング等の役務だけを提供する取引は、使用料とは異なる所得区分となる場合があります。
一つの契約にライセンス、開発支援、広告、最低保証金、リクープおよび売上分配が含まれる場合は、各支払の内容と計算方法を分けて確認します。
スペインの公的な基本資料は居住者証明書です。
| 書類 | 日本法人の対応 | 提出・保管先 | 位置付け |
| 居住者証明書 | 日本の所轄税務署へ交付請求し、支払前に送付 | スペインの支払者 | 条約免税の基本資料 |
| 使用料・租税条約適用確認書 | 会社情報、契約、権利、金額、支払日等を記載 | スペインの支払者 | 任意の補足資料 |
| 実質的受益者宣誓書 | 支払者から求められた場合に作成・署名 | スペインの支払者 | 任意の補足資料 |
| ゲーム出版・配信許諾契約書の写し | 権利、地域、期間、算定方法等を確認 | 支払者・銀行等が求めた場合 | 所得区分の確認資料 |
| 請求書の写し | ゲーム名、契約番号、対象期間、金額、通貨等を確認 | 支払者・銀行等が求めた場合 | 支払・送金の確認資料 |
| 銀行口座情報 | 英文名義、SWIFT/BIC、口座番号等を確認 | スペインの支払者 | 送金資料 |
スペイン企業が、原本、スペイン語訳または追加の会社資料を求める場合があります。
提出方法と期限は、契約締結後の早い段階で支払者へ確認します。
日本法人の役割
• 日本の所轄税務署から居住者証明書を取得する
• 契約書と請求書から、著作権使用料に該当する根拠を確認する
• 必要に応じて使用料・租税条約適用確認書および実質的受益者宣誓書を作成する
• 最初の支払前に、スペインの支払者へ必要資料を送付する
• 提出した資料、支払明細および判断根拠の控えを保管する
スペインの支払者の役割
• 居住者証明書が条約上の居住性を証明し、有効期間内であることを確認する
• 契約内容、受益者、所得区分、恒久的施設との関連等を確認する
• 要件を満たす場合に源泉徴収税率0%で支払う
• 条約免税の根拠資料を保存する
• Modelo 216の申告およびModelo 296の年次報告を行う
この事例では、日本法人がスペイン税務当局へ租税条約の申請書を直接提出する方式ではありません。
日本法人は資料を支払者へ提供し、スペイン側の申告・報告は支払者が行います。
居住者証明書は、日本法人が日本・スペイン租税条約上の日本の居住者であることを、日本の所轄税務署が証明する書類です。
スペインで条約免税を適用する際の基本資料となります。
1. 国税庁の「No.9210 居住者証明書の請求」から、租税条約等締結国用の様式と記載要領を取得する
2. 法人名、代表者名、所在地、提出先国「スペイン王国 / The Kingdom of Spain」等を日本語と英語で記載する
3. 居住者証明書と交付請求書を、所轄税務署の管理運営部門へ郵送または持参する
4. 代理人が請求する場合は、法人代表者からの委任状を添付する
5. 郵送で受け取る場合は、所要の切手を貼った返信用封筒を同封する
交付に必要な日数は税務署や時期、確認事項によって異なります。
支払予定日から逆算して余裕を持って請求します。
スペインでの有効期間
スペインの税務上、居住者証明書の有効期間は原則として発行日から1年間です。
有効期間後の支払に同じ証明書を使用せず、新しい証明書を取得します。
PDF送付で足りるか、原本またはスペイン語訳が必要かは、スペイン企業の社内手続や取引銀行によって異なる場合があります。
支払前に確認してください。
通常の条約免税について、スペイン税務当局の一般案内は居住者証明書を根拠資料としており、アポスティーユを一律の必須資料とはしていません。
ただし、支払者、銀行または個別の確認で追加認証を求められた場合は、その指示に従います。
取得手続の最新情報は、国税庁「No.9210 居住者証明書の請求」で確認します。
契約書に「Royalty Fee」と記載されているだけでは、条約上の著作権使用料に該当することを十分に説明できません。
契約書と請求書において、次の事項をできるだけ一致させます。
• 日本法人がゲーム著作権を保有すること
• ゲーム名および契約番号
• スペイン企業に許諾する権利(複製、ローカライズ、宣伝、出版、公衆送信、配信等)
• 許諾地域がSpainまたは契約で特定した地域であること
• 許諾期間、媒体およびプラットフォーム
• 総売上、控除項目、純売上、使用料率、最低保証金、リクープ等の計算方法
• 支払対象期間、通貨、支払日および請求書番号
請求書の支払内容は、「Copyright royalty for video game publishing and distribution rights」等、ゲーム出版・配信権の許諾に係る著作権使用料であることが分かる表現にします。
契約に開発、移植、広告、運営その他の役務が含まれる場合は、使用料部分と役務部分の対価、算定方法および請求を区分できるようにします。
1. ゲーム出版・配信許諾契約を確認し、支払が著作権使用料、ゲーム販売または役務提供のいずれに当たるかを判定する
2. スペインのゲームパブリッシャーが求める居住者証明書、原本、翻訳および提出期限を確認する
3. 日本法人が使用料の受益者であり、スペインの恒久的施設と実質的な関連がないことを確認する
4. 日本の所轄税務署から、提出先国をスペイン王国とした居住者証明書を取得する
5. 必要に応じて、使用料・租税条約適用確認書、実質的受益者宣誓書、契約書、請求書および銀行口座情報を準備する
6. 最初の使用料支払前に、居住者証明書と求められた補足資料をスペインの支払者へ送付する
7. 支払明細でスペインの源泉税が0%となっていることを確認し、提出書類と判断根拠を保存する
8. 居住者証明書の発行日から1年を管理し、有効期間後の支払前に更新する
最終確認として、会社名、住所、ゲーム名、契約番号、金額、通貨、支払日、支払目的の表現が、居住者証明書、契約書、請求書、確認書および送金情報で矛盾していないか確認します。
スペインから日本へ多額の送金が行われる場合、日本の受取銀行またはスペイン側の送金銀行から、送金目的や取引内容の確認を求められることがあります。
• ゲーム出版・配信許諾契約書
• 請求書
• 居住者証明書
• 使用料・租税条約適用確認書
• ゲーム名、契約番号、許諾地域、支払期間、使用料の計算根拠が分かる資料
• 受取人の英文名義、住所、銀行名、支店名、SWIFT/BIC、口座番号および通貨
送金目的は「PAYMENT OF COPYRIGHT ROYALTIES FOR VIDEO GAME PUBLISHING AND DISTRIBUTION RIGHTS」等、契約書と請求書の表現に合わせます。
銀行に届け出た英文法人名とBeneficiary Nameを一致させます。
• 居住者証明書を取得すれば、契約内容を確認せず自動的に0%になると考える
• 居住者証明書のアポスティーユを通常の条約免税で一律の必須資料と説明する
• 契約書と請求書で、著作権者、許諾権利、地域、期間、算定方法および支払目的が明確になっていない
• 支払後に書類を準備し、いったん24%を源泉徴収されてから対応する
Q1. スペインのゲームパブリッシャーから著作権使用料を受け取れば、必ず源泉税0%ですか
いいえ。
受取人が条約上の日本の居住者か、使用料の受益者か、支払が第12条の使用料に該当するか、スペインの恒久的施設と実質的な関連がないか、有効な居住者証明書が支払前に提供されているかなどを確認します。
Q2. 日本法人はスペイン税務当局へ申請書を直接提出しますか
日本法人は居住者証明書等をスペインの支払者へ提供し、支払者が免税処理、Modelo 216およびModelo 296の申告・報告を行います。
Q3. 居住者証明書は必ず必要ですか
スペインで租税条約による免税を正当化する基本資料です。
証明書には、日本・スペイン租税条約の意味における日本の居住者であることが明記されている必要があります。
Q4. 実質的受益者宣誓書はスペイン税務当局の公式様式ですか
いいえ。
支払者が日本法人を使用料の受益者として確認するための任意の補足資料です。
支払者の指定様式がある場合は、その様式を優先します。
Q5. 居住者証明書にはアポスティーユが必要ですか
スペイン税務当局の一般案内では、通常の条約免税の根拠として居住者証明書が示され、アポスティーユは一律の必須資料とされていません。
ただし、支払者、銀行または個別の確認で求められた場合は対応します。
Q6. 居住者証明書は毎年取得しますか
スペインでの有効期間は原則として発行日から1年間です。
有効期間後の支払がある場合は、新しい証明書を取得します。
Q7. 支払後に居住者証明書を提出しても間に合いますか
支払前の提出を基本とします。
支払後に24%が源泉徴収された場合は、支払者による訂正またはスペインでの還付手続が必要となる可能性があるため、契約締結後の早い段階で準備します。
Q8. スペイン語訳や原本は必ず必要ですか
一律ではありません。
PDFで処理できるか、原本、スペイン語訳、電子署名または追加の会社資料が必要かを、スペインの支払者へ確認します。
三谷豊章税理士事務所では、日本のゲーム会社がスペインのゲームパブリッシャーから受け取る著作権使用料について、契約内容と所得区分の確認、日本・スペイン租税条約第12条の適用確認、居住者証明書の取得支援、使用料・租税条約適用確認書および実質的受益者宣誓書の作成支援、支払者からの質問への対応を行っています。
詳細な居住者証明書の記載手順、使用料・租税条約適用確認書、実質的受益者宣誓書、提出書類チェックリストおよび銀行送金情報は、「ゲーム配信許諾に係る著作権使用料の租税条約対応ガイド【スペイン編】」に収録しています。
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三谷 豊章(税理士・三谷豊章税理士事務所)
名古屋国税局、税務大学校名古屋研修所、各税務署において約17年間、税法の解釈・適用に関する研修業務および納税者・税理士からの税務相談対応に従事。
2024年7月に名古屋西税務署を退職し、2024年10月に三谷豊章税理士事務所を開設。
• 税理士の経歴
• スペイン税務当局:恒久的施設を有しない非居住者の一般税率
• スペイン税務当局:条約免税を証明する書類と居住者証明書の有効期間
• スペイン税務当局:条約免税となる所得とModelo 210の申告義務
このページは、日本法人が自社のゲーム著作権を保有したまま、スペインのゲームパブリッシャーへスペイン国内での出版・配信等の権利を許諾し、著作権使用料を受け取る場合の一般的な情報を整理したものです。
契約内容、所得区分、許諾する権利の範囲、法人形態、使用料の受益者、スペインの恒久的施設の有無、支払者の源泉徴収義務、スペイン企業の社内手続および取引銀行の確認事項などにより取扱いは異なります。
個別案件の税務判断、すでに源泉徴収された税額の還付、スペイン法上の申告義務および追加書類の要否については、事実関係に応じて日本およびスペインの専門家へ確認してください。
