オーストリア国内法では、日本のゲーム会社がオーストリアのパブリッシャーから受け取る著作権使用料は、原則として20%の源泉徴収対象です。
日本・オーストリア租税条約第12条第1項の要件を満たす場合、オーストリアの源泉税は0%(免税)となります。
日本法人は、支払前にZS-QU2、国税庁様式の居住者証明書、契約書その他の必要資料をオーストリアの支払者へ提出します。
日本の税務署はZS-QU2には証明しないため、ZS-QU2のSection IVは空欄とし、国税庁様式の居住者証明書を別紙として添付します。
同一暦年のオーストリア源泉所得の合計額が1万ユーロ以下で、オーストリアに第二の住所・居所がない場合には、外国税務当局による居住者証明を省略できる簡易取扱いがあります。
• 準備する書類
• よくある誤り
• 主な公的資料
日本のゲーム会社が、自社開発ゲームの著作権を保有したまま、オーストリアのゲームパブリッシャーにオーストリア国内での複製、出版、販売促進、配信、公衆提供などの権利を許諾し、その対価として著作権使用料を受け取る場合、オーストリアで源泉徴収の対象となることがあります。
ただし、その支払が日本・オーストリア租税条約上の「使用料」に該当し、日本法人が使用料の受益者であり、使用料の基因となった権利がオーストリアの恒久的施設(PE)と実質的な関連を有しない場合には、同条約第12条第1項によりオーストリアの源泉税を0%にできる可能性があります。
このページでは、日本のゲーム会社がオーストリアのゲームパブリッシャーへ提出するZS-QU2を中心に、必要書類、居住者証明書、年間1万ユーロ以下の簡易取扱いおよび支払前の実務手順を整理します。
オーストリア国内法では、非居住者に支払う著作権使用料は、原則として総額の20%が源泉徴収の対象になります。
一方、日本・オーストリア租税条約第12条第1項は、一方の締約国内で生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料について、受益者の居住国だけで課税できると定めています。
そのため、条約上の要件を満たす日本のゲーム会社が受け取るオーストリア源泉の著作権使用料は、オーストリアの源泉税が0%となり得ます。
実務では、日本法人が支払前にZS-QU2その他の資料をオーストリアの支払者へ提出し、支払者が書類を確認・保存した上で、源泉地免税を適用するかを判断します。ZS-QU2をオーストリア税務当局へ事前に直接提出する手続ではありません。
ここでいう0%は、オーストリアでの源泉徴収税率です。受領した使用料収入は、日本法人の日本での法人税申告に反映する必要があります。
また、契約書に「Royalty」「Distribution Fee」「Publishing Fee」「Revenue Share」などと書かれているだけで、必ず著作権使用料に該当するわけではありません。契約内容の実質を確認します。
| 所得の区分 | 条約適用前 | 条約適用後 | 主な根拠 |
| 著作権使用料 | 原則20% | 0%(免税) | 日本・オーストリア租税条約 第12条第1項 |
源泉税0%は自動的に適用されるものではありません。
少なくとも、次の事項を確認します。
• 受取人が日本・オーストリア租税条約上の日本の居住者であること
• 受取人である日本法人が使用料を自己のために受領すること
• 支払の実質が、ゲームの著作権に基づく複製、出版、配信その他の利用許諾の対価であること
• 使用料の支払の基因となった権利が、オーストリアの恒久的施設(PE)と実質的な関連を有しないこと
• 支払前に、ZS-QU2、居住者証明書その他の必要資料をオーストリアの支払者へ提出すること
• 支払者が提出資料と事実関係を確認し、源泉地免税を適用できると判断すること
ゲーム販売代金そのものか、著作権利用許諾の対価かは、契約書の名称ではなく、支払の実質で判定します。
日本のゲーム会社が著作権を保有したまま、オーストリアのパブリッシャーへオーストリア国内で複製、出版、販売促進、配信、公衆提供する権利を許諾し、その利用実績や売上高などに応じて対価を受け取る場合は、著作権使用料に該当する可能性があります。
これに対し、ゲームそのものを売り切る取引、または開発、移植、運営などの役務提供の対価は、著作権使用料とは異なる所得区分となる可能性があります。
契約書と請求書では、ゲーム名、著作権者、許諾する権利、許諾期間、使用料の算定方法および支払時期を具体的に記載しておくことが重要です。
ゲーム配信許諾に係るオーストリアの租税条約対応で準備する書類
オーストリアの支払者は、ZS-QU2その他の資料を保存し、税務調査等で確認を求められたときに提示できる状態にします。
支払者独自の様式やオンライン登録画面がある場合は、その案内も確認してください。
| 書類 | 日本法人の対応 | 位置付け |
| ZS-QU2 | Section I~IIIを作成し、Section IIへ署名。Section IVは空欄 | 基本書類 |
| 国税庁様式の居住者証明書 | 所轄税務署へ交付請求し、別紙として添付 | 日本居住者であることの証明 |
| ゲーム配信許諾契約書の写し | ゲーム名、許諾権利、期間、使用料算定を確認 | 所得区分・権利範囲の確認資料 |
| 請求書・ロイヤリティ明細 | 契約番号、対象期間、総額、通貨を契約と一致させる | 支払額・送金目的の確認資料 |
| 会社・事業実体の説明資料 | 登記事項、事業内容、従業員、事務所等を整理 | ZS-QU2の回答内容の補足資料 |
書類の原本が必要か、電子データで先行提出できるか、契約更新時に再提出が必要かについては、支払者の税務担当者へ確認してください。
ZS-QU2は誰が作成し、どこへ提出しますか
ZS-QU2は、著作権使用料を受け取る日本のゲーム会社が作成し、オーストリアのゲームパブリッシャーまたは源泉徴収義務者へ提出します。
支払者が源泉地免税を適用する場合に備えて保存する書類であり、日本法人がZS-QU2をオーストリア税務当局へ事前に直接郵送するものではありません。
日本の税務署はZS-QU2には証明しません。
ZS-QU2への証明依頼は行わず、Section IVは空欄とし、国税庁様式の英文居住者証明書を別紙として添付します。
ZS-QU2で確認する主な記載項目
次は、通常の日本の株式会社または合同会社が、自社で保有するゲーム著作権の使用料を自己のために受領し、オーストリアに恒久的施設(PE)がない場合の主な確認項目です。
Section I:受益者である日本法人の基本情報
• 法人の正式名称および法人形態
• 実際の本店または事業の実質的な管理場所の住所
• 法人の設立国としてJapan
• 資産運用の範囲を超える事業活動を行っているか
• 自社の従業員および事業所を有しているか
「事業活動」「従業員」「事業所」に関する回答は、記載例をそのまま写さず、会社の実情どおりに回答します。
一人会社、役員のみの会社、自宅事務所の場合も、実際の開発・契約・権利管理等の状況を説明できるようにします。
Section II:受益者による申告
• 署名場所および署名日
• 代表者その他の署名権限者の署名および氏名
• 所得を自己のために受領し、他者へ移転する義務がないこと
• 所得がオーストリアの恒久的施設に帰属しないこと
Section III:オーストリア所得に関する情報
• 支払者であるオーストリア法人の正式名称および所在地
• 所得の種類として、ゲームの出版・配信権の許諾に係る著作権使用料であること
• 契約番号、ゲーム名および許諾内容
• オーストリア法上の源泉徴収対象となる支払見込額
Section IV:居住国税務当局による証明
日本の税務署はZS-QU2には証明しないため、Section IVは空欄にします。
別紙として、所轄税務署が発行した国税庁様式の英文居住者証明書を添付します。
支払前に、この書類の組合せで処理することをオーストリアの支払者へ確認してください。
居住者証明書にアポスティーユを付ける必要はありません。
居住者証明書は、日本法人が日本・オーストリア租税条約上の日本の居住者であることを、日本の所轄税務署が証明する書類です。
オーストリア向けには、国税庁の「居住者証明書交付請求書・居住者証明書(租税条約等締結国用)」を使用します。
標準的には、郵送による請求から交付まで約3週間を見込んで準備します。
税務署や時期により前後するため、最初の使用料支払日から余裕を持って請求してください。
1. 居住者証明書交付請求書・居住者証明書を必要部数+1部
2. 会社の代表者本人または代理人本人であることを確認できる身分証明書の写し(例:運転免許証、マイナンバーカードの表面、パスポート等)
3. 代理人が請求する場合は、法人代表者から代理人への委任状
4. 所要の切手を貼った返信用封筒。送付先は原則として法人の住所(納税地)
封筒の表示例として「居住者証明書在中」と記載します。
宛先は所轄税務署の管理運営部門とします。
• 法人の住所(納税地)を日本語および英語で記載する
• 法人名および代表者氏名を日本語および英語で記載する
• 提出先の国名として「オーストリア共和国」「The Republic of Austria」と記載する
• 対象期間は、支払者から指定された場合に記載する
• 申述事項のチェック欄を確認する
• 証明書の必要枚数を記載し、必要部数+1部を提出する
• 証明書欄の相手国名として「The Republic of Austria」を記載する
本人確認書類の写しや委任状の取扱いは、国税庁の「留意事項・記載要領」の裏面・注意事項を確認した上で準備します。
受取人がオーストリアに第二の住所・居所を有せず、同一暦年に受け取るオーストリア源泉所得の合計額が1万ユーロ以下である場合は、外国税務当局による居住者証明を省略できる簡易取扱いがあります。
1万ユーロは、1回の支払額ではなく、その暦年におけるオーストリア源泉所得の合計額で判定します。
簡易取扱いでも、受取人の名称・住所、日本の居住者であること、所得の種類、支払者、金額、オーストリアのPEの有無等を支払者が確認できる資料は必要です。
通常は、完成・署名済みのZS-QU2を支払者へ提出します。
簡易取扱いを採用するかは、源泉徴収責任を負うオーストリアの支払者が判断します。
少額であっても、支払者が国税庁様式の居住者証明書を求める場合は、その指示に従ってください。
1. ゲーム配信ライセンス契約書を確認し、支払が著作権使用料、ゲーム販売または役務提供のいずれに当たるかを判定する
2. オーストリアのゲームパブリッシャーが求めるZS-QU2、居住者証明書、契約書その他の追加資料を確認する
3. 同一暦年のオーストリア源泉所得の合計額が1万ユーロを超えるかを確認する
4. ZS-QU2のSection I~IIIを事実に基づいて作成し、Section IIへ代表者等が署名する。Section IVは空欄とする
5. 通常手続では国税庁様式の居住者証明書を取得し、ZS-QU2の別紙として準備する
6. 最初の使用料支払前に、ZS-QU2、居住者証明書および支払者が求める補足資料を提出する
7. 支払明細で源泉税率が0%となっているかを確認し、提出書類と判断根拠を保存する
8. 商号・住所、契約内容、支払者、事業実体、PEの有無または受取額に変更があった場合は、再提出の要否を支払者へ確認する
Subject: Documents for Austrian treaty relief at source
We are a Japanese corporation receiving copyright royalties under our game publishing agreement.
The Japanese tax office does not certify Austrian Form ZS-QU2. We therefore plan to provide:
1. the completed and signed Form ZS-QU2, with Section IV left blank;
2. a separate Certificate of Residence issued by the Japanese tax office; and
3. a copy of the publishing agreement and royalty statement, if required.
Please confirm whether these documents are sufficient for applying the 0% treaty rate before the first payment, and whether the signed originals must be mailed.
オーストリアから日本へ使用料が送金される場合、支払者または銀行から、送金目的や取引内容を確認する資料の提出を求められることがあります。
• ゲーム配信ライセンス契約書
• 請求書
• ZS-QU2の写し
• 居住者証明書
• ロイヤリティ計算書
• ゲーム名、契約番号、許諾地域、支払期間および使用料の計算根拠が分かる資料
契約書、請求書、ZS-QU2および送金依頼資料で、法人名、住所、金額、契約番号および支払目的の表現をできるだけ一致させておくと、確認が円滑になります。
| 項目名 | 日本語訳 | 確認事項 |
| Beneficiary Name | 受取人名 | 銀行届出と一致する英文法人名 |
| Beneficiary Address | 受取人住所 | 英文で記載 |
| Beneficiary Bank Name | 銀行名 | 銀行の正式英文名 |
| Bank Branch Name | 銀行支店名 | 支店の正式英文名 |
| Bank Address | 銀行住所 | 銀行指定の英文住所 |
| SWIFT/BIC Code | 国際銀行コード | 銀行へ確認。通常8桁または11桁 |
| Account Number | 口座番号 | 支店番号を含めるか銀行へ確認 |
| Currency | 通貨 | EURまたはJPYなど契約に従う |
| Purpose of Remittance | 送金目的 | COPYRIGHT ROYALTY UNDER GAME PUBLISHING AGREEMENT |
• 日本の税務署へZS-QU2への証明を依頼する
• 居住者証明書を郵送請求する際に、本人確認書類の写しを同封しない
• 契約書に「Royalty」と書かれているだけで、支払を著作権使用料と判断する
• 年間1万ユーロの判定を、1回ごとの支払額で行う
• ZS-QU2の「事業活動」「従業員」「事業所」の回答を、記載例のまま転記する
• ZS-QU2をオーストリア税務当局へ事前に直接提出する書類と考える
• 支払後に書類を準備し、源泉税が差し引かれてから対応する
Q1. オーストリアのゲームパブリッシャーから著作権使用料を受け取れば、必ず源泉税0%ですか
いいえ。
受取人が日本の居住者であること、使用料の受益者であること、支払が条約上の使用料であること、オーストリアのPEと実質的な関連がないことなどを確認し、支払前にZS-QU2等を提出する必要があります。
Q2. ZS-QU2はオーストリア税務当局へ提出しますか
通常の源泉地免税では、日本法人からオーストリアの支払者へ提出し、支払者が保存します。
Q3. 日本の税務署へZS-QU2のSection IVの証明を依頼しますか
依頼しません。
日本の税務署はZS-QU2には証明しないため、Section IVは空欄とし、国税庁様式の居住者証明書を別紙として添付します。
Q4. 居住者証明書を郵送で請求するとき、身分証明書の写しは必要ですか
必要です。
法人代表者本人または代理人本人であることを確認できる書類の写しを同封します。代理人の場合は委任状も準備します。
Q5. 居住者証明書はどのくらいで交付されますか
標準的には約3週間を見込んで準備します。
税務署や時期によって前後するため、支払日から余裕を持って請求します。
Q6. 年間受取額が1万ユーロ以下でも居住者証明書が必要ですか
簡易取扱いにより外国税務当局による居住者証明を省略できる場合があります。ただし、1万ユーロは暦年中のオーストリア源泉所得の合計額で判定し、支払者が居住者証明書を求める場合は提出します。
Q7. 居住者証明書にアポスティーユは必要ですか
必要ありません。
Q8. 個人事業者もZS-QU2を使いますか
通常、法人はZS-QU2、個人はZS-QU1を使用します。
このページは日本法人を対象にしています。
Q9. 申請は支払後でも間に合いますか
源泉地免税の書類は支払前に準備・提出します。
契約締結後の早い段階で、支払者が求める書類と提出方法を確認してください。
三谷豊章税理士事務所では、日本のゲーム会社がオーストリアのパブリッシャーへゲームの出版・配信権等を許諾して受け取る著作権使用料について、契約内容と租税条約の確認、ZS-QU2の記載支援、居住者証明書の取得支援および支払者からの質問への対応を行っています。
詳細なZS-QU2の入力例、全項目和訳、居住者証明書の作成・郵送手順および支払者への提出資料は、「ゲーム配信許諾に係る著作権使用料の租税条約対応ガイド【オーストリア編】」に収録しています。
• 国別サンプル
執筆・監修
三谷 豊章(税理士・三谷豊章税理士事務所)
名古屋国税局、税務大学校名古屋研修所、各税務署において約17年間、税法の解釈・適用に関する研修業務および納税者・税理士からの税務相談対応に従事。
2024年7月に名古屋西税務署を退職し、2024年10月に三谷豊章税理士事務所を開設。
• オーストリア財務省:Relief from Austrian Withholding Taxes under Double Tax Conventions
• 国税庁:居住者証明書交付請求書・居住者証明書(租税条約等締結国用)
• 国税庁:「居住者証明書交付請求書・居住者証明書」留意事項・記載要領
このページは、日本のゲーム会社が自社のゲーム著作権を保有したまま、オーストリアのゲームパブリッシャーへオーストリア国内での出版・配信等の権利を許諾し、著作権使用料を受け取る場合の一般的な情報を整理したものです。
契約内容、所得区分、法人形態、使用料の受益者、オーストリアの恒久的施設の有無、年間の受取額および支払者の社内手続などにより取扱いは異なります。
実際の提出前に、オーストリアの支払者または現地税務専門家へ必要書類を確認してください。
