イラスト・シナリオ・3D・BGM・プログラムなどをゲーム制作工程別に解説
ゲーム開発では、イラストレーター、シナリオライター、3Dモデラー、作曲家、プログラ
マー、声優、翻訳者など、多くの個人クリエイターへ制作業務を外注します。
このときゲーム会社が確認する必要があるのは、「源泉徴収が必要か」だけではありません。
著作物が生まれる作業では、源泉徴収の判断に関連して、著作物性や権利帰属など著作権上の論点も生じます。
このページでは、次の順序で各作業を整理します。
1.実際に何をしてもらうのか
2.その成果物は著作物になるのか
3.著作権は原則として誰に発生するのか
4.著作権上、どのような権利関係が問題になるのか
5.外注費から源泉徴収する必要があるのか
このページの対象
このページでは、日本のゲーム会社が、日本国内に居住する個人・個人事業主へ業務委託する場合について、ゲーム制作の作業ごとに源泉徴収を中心に、著作権上の一般的な留意点も整理します。
外注先が法人の場合は、個人への支払いとは源泉徴収の対象範囲が異なるため、このページの対象外とします。
目次
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最初に知っておきたい7つの基本ルール
1.職種名ではなく「実際に何をしてもらうか」で判断します
「イラストレーター」「3Dモデラー」「プログラマー」という肩書だけで、著作権や源泉徴収の取扱いを判断することはできません。
例えば同じイラストレーターでも、
オリジナルキャラクターを一からデザインする仕事
と、
完成済み画像を指定サイズへ縮小するだけの仕事
では、作業内容が全く異なります。
国税庁も、原稿、作曲、デザイン、脚本、脚色、翻訳など、実際の報酬・料金の内容によって源泉徴収対象を区分しています。
2.著作物かどうかは「創作的な表現」があるかで考えます
ゲーム制作では、アイデア、ルール、数値、処理方法などと、それを具体的に表現した文章・画像・音楽・プログラムなどを区別する必要があります。
また、完成済みデータを機械的に変換するだけの場合と、制作者自身が新たな表現を創作する場合も分けて考えます。
著作権法上の著作物性は、具体的な創作的表現を基礎に判断されます。
3.制作費を支払っただけでは著作権はゲーム会社へ移りません
個人クリエイターが著作物を創作した場合、原則としてそのクリエイターが著作者です。
完成データを納品してもらい、制作費を全額支払ったとしても、それだけで著作権まで当然にゲーム会社へ移転するわけではありません。
著作権をゲーム会社へ移転するには、当事者間で著作権譲渡について合意する必要があります。
具体的な契約条項の作成・審査や、その契約で必要な権利が確保できているかという個別判断は、弁護士にご相談ください。
著作権をクリエイターに残したまま、一定の利用について許諾を受ける方法もあります。
4.著作権譲渡を予定する場合の一般的な注意点―著作権法第27条・第28条
ゲーム会社は外注成果物を、DLC、続編、リメイク、海外版、他機種への移植、3D化、PV、広告などにも利用することがあります。
著作権法第27条・第28条に規定する二次的著作物関係の権利は、著作権譲渡契約で譲渡対象として特に明記しなければ、譲渡されなかったものと推定されます。
著作権法上、第27条・第28条の権利を含めた譲渡が問題となる場合があります。
具体的な契約でどの権利をどの範囲まで取得すべきか、条項が十分かという判断は、弁護士にご相談ください。
5.著作者人格権は譲渡できません
著作権をゲーム会社へ譲渡しても、著作者人格権は著作者本人に残り、譲渡することはできません。
ゲーム開発では、イラストのトリミング、色変更、シナリオの修正、3D化、翻訳などが行われることがあります。
そのため、加工・改変を予定する場合には著作者人格権が問題となり得ます。
具体的な契約上の対応や条項については、弁護士にご相談ください。
6.著作物だから源泉徴収が必要とは限りません
著作権法上の著作物性と、所得税法上の源泉徴収は別の判定です。
例えば、創作性のあるプログラムコードは著作物となり得ます。
しかし、プログラムに著作権がある=プログラム制作費から必ず源泉徴収するという関係にはなりません。
源泉徴収は、その支払いが所得税法第204条で定められた報酬・料金に該当するかによって判断します。
国税庁は、原稿、作曲、デザイン、翻訳等について具体的な区分を示しています。
7.著作権譲渡条項があるだけでも源泉徴収は決まりません
例えば、
「キャラクターデザイン制作費20万円。成果物の著作権はゲーム会社へ譲渡する」
という契約であっても、まず20万円がキャラクターデザイン制作の対価なのかを確認します。
契約上の著作権譲渡と、制作報酬についての源泉徴収判定は分けて考えます。
なお、著作権譲渡の対価を制作費とは別に設定する場合には、その対価自体の税務上の取扱いを個別に確認します。
1.ゲーム企画・ゲームデザインを個人へ外注する場合
著作物性:企画書等の具体的な創作表現には生じる可能性があります。
著作権上の留意点:企画書・仕様書等を継続利用する場合は、権利関係が問題になることがあります。
源泉徴収:個別に確認が必要です。
どのような仕事ですか?
ゲームの基本コンセプト、遊び方、戦闘システム、成長方式、ステージ構成、ゲームサイクルなどを設計する仕事です。
著作物になる場合
ゲームの企画内容を、独自の文章、図、画像などによって具体的かつ創作的に表現した企画書や仕様書については、その表現部分に著作物性が生じる可能性があります。
著作物にならない・なりにくい場合
ゲームのアイデア、ルール、計算方法、パラメータそのものは、具体的な創作的表現とは分けて考えます。
例えば、ゲーム会社が決めた経験値テーブルをExcelへ入力するだけの作業は、オリジナルのゲーム企画を創作する仕事とは性質が異なります。
源泉徴収は必要ですか?
「ゲーム企画料」という名称だけで源泉徴収の要否を決めることはできません。
原稿・デザイン等に該当する作業が含まれる場合には、その部分について検討します。
2.シナリオ・脚本・プロット・台詞を個人へ外注する場合
著作物性:原則としてあります。
著作権上の留意点:修正・続編・翻訳等を予定する場合は、権利関係が問題になります。
源泉徴収:原則として必要です。
どのような仕事ですか?
メインストーリー、イベントシナリオ、キャラクターの台詞、プロット、人物設定、世界観などを文章として制作する仕事です。
著作物になる場合
ライターが具体的なストーリー、台詞、人物設定等を創作的に文章化した場合には、その文章が著作物となります。
一方、「主人公が魔王を倒す」「近未来を舞台にする」といった抽象的なアイデアだけの場合は、具体的な文章表現とは分けて考えます。
ゲーム会社での具体例
キャラクター設定だけをライターへ渡し、イベントシーンの会話を一から書いてもらった場合には、具体的な台詞を創作したライター側の著作権を確認します。
また、ゲーム会社が作成したシナリオについて「もっと感動的になるよう全面的に修正してほしい」と依頼した場合には、加筆・修正部分についても権利関係を確認します。
著作権上の一般的な留意点
ゲーム会社が後から台詞を修正したり、別のライターへ続編を依頼したり、DLCを制作したり、海外版へ翻訳したりする場合には、どの権利が必要になるかが問題になります。
具体的な契約上の対応は弁護士に確認してください。
源泉徴収は必要ですか?
原則として必要です。
国税庁は、原稿の報酬として台本や映画のシノプスを挙げ、さらに脚本の修正・補正料やプロット料も対象となることを明示しています。
3.キャラクターデザイン・イラスト・背景を個人へ外注する場合
著作物性:原則としてあります。
著作権上の留意点:利用・改変・3D化等では、著作権上の権利関係が問題になります。
源泉徴収:創作・デザイン報酬であれば原則として必要です。
著作物になる場合
キャラクターの外見、衣装、装備、表情、構図、色彩、背景などについて、クリエイター自身が創作的な表現を行った場合です。
例えば「20代の女性剣士」という設定だけを渡し、髪型、服装、武器、配色までイラストレーターに創作してもらった場合が典型です。
著作物にならない・なりにくい場合
完成済み画像について、指定サイズへ縮小する、PNGをJPEGへ変換する、指示された位置で機械的に切り抜くといっただけの作業は、新しいイラストを創作する仕事とは分けて考えます。
著作権上の一般的な留意点
ゲーム本編だけでなく、DLC、続編、海外版、PV、広告、SNS、3D化などに利用する場合には、利用範囲に応じた権利処理が問題になります。
具体的な契約条項は弁護士に確認してください。
源泉徴収は必要ですか?
創作・デザイン部分については原則として必要です。
国税庁は、イラストレーターへの報酬について、構図やイラストが創作または意匠でありデザイン報酬に該当するとして、源泉徴収を要すると明示しています。
4.ロゴ・アイコン・UIグラフィックを個人へ外注する場合
著作物性:創作性のあるデザインには生じます。
著作権上の留意点:デザインの利用範囲に応じて、権利関係が問題になります。
源泉徴収:デザイン部分は原則として必要です。
ゲームタイトルのロゴ、オリジナルアイコン、ボタン、ウィンドウ、画面装飾などを一から制作してもらう場合には、デザインとしての著作物性と源泉徴収を検討します。
一方、ゲーム会社が完成済みの画像・レイアウトを用意し、外注先がUnity等の指定位置へ実装するだけの場合は、デザインを創作する仕事とは分けて考えます。
例えば、
UIデザイン15万円
Unity実装15万円
のように異なる作業を一人へ依頼するのであれば、契約書、見積書、請求書等で作業内容と対価を区分しておくと判断しやすくなります。
国税庁は、デザインとそれ以外の作業を一括して請け負わせた場合についても、対価を区分できるときはデザイン部分を源泉徴収の対象とする考え方を示しています。
5.3Dモデリングを個人へ外注する場合
著作物性:作業内容によって異なります。
著作権上の留意点:元の2Dデザインと3D制作者の創作部分の双方が問題になる場合があります。
源泉徴収:個別に確認が必要です。
著作物になる場合
「黒い鎧を着た大型騎士」という程度の設定だけを渡し、3D制作者自身が顔、体形、鎧、装飾、質感などを具体的に創作した場合には、その新たな表現について著作物性を検討します。
著作物にならない・なりにくい場合
完成済み3Dデータを別形式へ変換するなど、新しい創作的表現を加えない作業です。
2Dキャラクターを3D化する場合
別のイラストレーターが制作した2Dキャラクターを3D化する場合には、元の2D著作物について3D化に関する権利が問題になります。
そのうえで、3D制作者が形状・造形等に新たな創作的表現を加えた場合には、その部分についても権利関係を確認します。
二次的著作物の創作・利用では、著作権法第27条・第28条が関係する場合があります。
具体的な権利処理や契約条項については、弁護士に確認してください。
源泉徴収は必要ですか?
国税庁は「3Dモデリング」というゲーム制作工程を独立した源泉徴収項目として示していません。
したがって、造形そのものを創作するデザイン部分があるのか、完成済みデザインを技術的に3Dデータ化する作業なのかなど、実際の業務内容から判断します。
6.リギング・スキニングを個人へ外注する場合
著作物性:技術的設定だけであれば、新たな著作物が生じるとは限りません。
著作権上の留意点:独自ツール・スクリプト等を制作した場合は、その権利が別途問題になります。
源泉徴収:個別に確認が必要です。
既存の3Dモデルに対し、仕様書に従ってボーンやウェイトを設定するだけの仕事と、新しいキャラクターデザインを創作する仕事は区別します。
また、外注先がリギングのために独自のスクリプトやツールを開発した場合には、そのプログラムについて別途著作権を確認します。
源泉徴収についても「リギング料」という名称だけでは判断せず、デザイン等の対象業務が含まれているか、また高度な技術上の設計・分析等に該当するかを具体的に確認します。
7.モーション・アニメーションを個人へ外注する場合
著作物性:創作的な動作・映像表現には生じる可能性があります。
著作権上の留意点:改変・別作品利用等では、権利関係が問題になる場合があります。
源泉徴収:個別に確認が必要です。
例えば、「巨大な剣で攻撃する」という指示だけを渡し、構え、溜め、攻撃、その後の動きまでモーション制作者自身が具体的に演出した場合には、その表現について著作物性を検討します。
一方、ゲーム会社が所有する既存モーションを指定キャラクターへ割り当てるだけの作業とは区別します。
ゲーム用モーション制作は、国税庁が独立した源泉徴収対象業務として明示しているものではないため、実際の作業がデザイン等の対象業務に該当するかを個別に判断します。
8.VFX・エフェクト制作を個人へ外注する場合
著作物性:独自の映像表現を創作する場合には生じる可能性があります。
著作権上の留意点:外注先の創作部分と第三者素材では、権利関係が異なります。
源泉徴収:個別に確認が必要です。
魔法、炎、爆発、光などについて、形状、色彩、動き、タイミング等を組み合わせて独自の視覚表現を制作した場合には、その創作部分について著作物性を検討します。
一方、市販アセットの色や速度などを指示どおり変更するだけの作業とは区別します。
特に、市販アセット等を利用している場合には注意が必要です。
第三者素材を含む場合は、外注先との権利関係とは別に、第三者が持つ権利や利用条件が問題になります。
市販アセット等の具体的なライセンス条件をどのように解釈し、今回の利用が許されるかという個別判断は、必要に応じて弁護士に確認してください。
9.ゲームプログラミングを個人へ外注する場合
著作物性:創作性のある具体的なプログラムコードには生じ得ます。
著作権上の留意点:ゲーム固有コード、既存コード、OSS等では、権利関係が異なる場合があります。
源泉徴収:一律に判断せず、具体的な業務内容を確認します。
著作権について
著作権法はプログラムを著作物の一類型として規定しています。
一方、プログラム言語、規約、解法そのものは、プログラム著作物の具体的な表現とは区別されています。
例えば、外注プログラマーが戦闘システムのソースコードを独自に作成した場合には、その具体的なコードについて権利帰属を確認します。
著作権上の一般的な留意点
ゲーム固有コード、外注先が従前から所有している汎用コード、OSS、外部ライブラリ、開発ツールでは、著作権や利用条件が異なる場合があります。
特に、外注先の既存資産や第三者ライブラリを含む場合には、どの部分を譲渡・許諾の対象とするかが問題になります。
具体的な契約条項やライセンスの法的判断は、弁護士に確認してください。
源泉徴収は必要ですか?
プログラムに著作権が発生することだけを理由として源泉徴収するわけではありません。
国税庁が原稿等について示している表には、一般的な「プログラミング」という業務名は明示されていません。
単に「プログラマーだから源泉徴収不要」「プログラマーだから源泉徴収必要」と一律には判断せず、実際の委託業務を確認します。
10.BGM・作曲・編曲を個人へ外注する場合
著作物性:原則としてあります。
著作権上の留意点:ゲーム本編以外にも利用する場合は、利用範囲に応じた権利関係が問題になります。
源泉徴収:原則として必要です。
ゲーム専用のオリジナルBGMを作曲してもらった場合、その楽曲について原則として作曲家が著作者となります。
ゲーム本編だけでなく、DLC、続編、PV、サウンドトラック、動画配信、海外版などで使用する場合には、利用範囲に応じた著作権上の権利処理が問題になります。
具体的な契約上の対応は弁護士に確認してください。
既存曲をゲーム用に編曲する場合には、編曲者側の権利だけでなく、元の楽曲の権利処理も必要になります。
源泉徴収については、国税庁が作曲の報酬だけでなく編曲の報酬も対象として明示しています。
11.効果音・録音・ミックスを個人へ外注する場合
著作物性:作業内容によって異なります。
著作権上の留意点:使用素材・実演・録音物等について、複数の権利が関係する場合があります。
源泉徴収:個別に確認が必要です。
効果音制作には、一から独自の音を制作する仕事、複数の音源を組み合わせる仕事、録音する仕事、完成済み音源の音量を調整するだけの仕事などが含まれます。
例えば、複数の録音素材を加工・構成してゲーム専用の攻撃音を制作するケースと、ゲーム会社所有の完成音源を指定音量へ調整するだけのケースでは、作業内容が異なります。
国税庁は「レコード、テープ又はワイヤーの吹き込みの報酬」等を源泉徴収対象として掲げていますが、この規定だけからゲーム用のすべての効果音制作費が一律に源泉徴収対象になるとは判断しません。
具体的な制作・録音・編集内容から個別に検討します。
12.声優・ナレーターへ音声収録を依頼する場合
著作物性:声優がシナリオの著作者になるわけではありません。
著作権上の留意点:著作権とは別に、実演家の権利が問題になります。
源泉徴収:出演・実演等の対象報酬に該当するか個別に確認します。
声優がキャラクターの台詞を演じても、通常、そのことによって元のシナリオの著作者になるわけではありません。
一方、著作権法は著作者の権利とは別に、実演家等の著作隣接権を定めています。
収録した音声をゲーム本編、DLC、続編、PV、広告、SNS動画、イベント等で利用する場合には、実演家の権利を含む権利処理が問題になります。
具体的な利用許諾・契約内容は弁護士に確認してください。
源泉徴収について、国税庁は映画・演劇等への出演等の報酬を源泉徴収対象としています。
ただし、国税庁の公表資料に「ゲームのキャラクターボイス」という名称で独立した判定事例が示されているわけではないため、このページでは、具体的な契約・業務内容が出演・実演等の報酬に該当するかを確認して判断する扱いとします。
13.ゲームの翻訳・ローカライズを個人へ外注する場合
著作物性:創作的な翻訳文には生じます。
著作権上の留意点:翻訳者と原著作物の双方の権利が関係します。
源泉徴収:翻訳報酬は原則として必要です。
例えば、日本語シナリオを基に、キャラクターの性格に合わせて話し方や言葉を選びながら英語版を制作した場合には、翻訳された文章について二次的著作物としての権利関係を確認します。
著作権法も、翻訳等によって創作された二次的著作物を保護対象としています。
翻訳文を本編、DLC、続編、ストアページ、PV、広告などへ利用したり、後日修正したりする場合には、翻訳者と原著作物の権利が問題になります。
具体的な契約上の対応は弁護士に確認してください。
源泉徴収については、国税庁が翻訳の報酬・料金を明示的に対象としています。
14.翻訳チェック・校正・LQAを個人へ外注する場合
著作物性:創作的に文章を書き直す部分には生じる可能性があります。
著作権上の留意点:翻訳・リライト部分と表示確認部分では、著作権上の論点が異なります。
源泉徴収:翻訳・校正部分とテスト部分を分けて判断します。
LQAには性質の異なる仕事が混在します。
例えば、プレイしながら不自然な英語をキャラクターらしい表現へ全面的に書き換える作業と、
文字がウィンドウからはみ出している箇所を報告するだけの作業は同じではありません。
前者は翻訳・リライト・校正の性質があります。
後者は表示・動作テストとしての性質が強くなります。
国税庁は翻訳を源泉徴収対象としており、校閲についても監修料に該当するものとして源泉徴収を要するとする質疑事例を公表しています。
また、報酬・料金等の納付書の区分でも「校正」が掲げられています。
したがって、「LQA一式」とするより、翻訳・リライト・校正と、表示確認・動作確認を業務内容・対価の面で区分しておくと、源泉徴収の判断がしやすくなります。
契約条項への反映が必要な場合は弁護士に確認してください。
15.デバッグ・QA・テストプレイを個人へ外注する場合
著作物性:通常のバグ発見・動作確認だけでは、ゲーム本体について新たな著作権が生じるとは通常考えにくいです。
著作権上の留意点:通常のテストでは、著作権が中心的な問題になりにくいと考えられます。
源泉徴収:通常のテストプレイ等は原稿・デザイン等とは区別します。
例えば、「ステージ3で扉が開かない」、「この操作をするとゲームが停止する」といったバグを発見して報告する通常のデバッグでは、その人がゲーム本体を創作したことにはなりません。
一方、通信負荷、フレームレート、メモリ使用量等を専門的に分析し、技術的改善方法まで設計・評価する業務は、通常のテストプレイとは性質が異なります。
一人のクリエイターに複数の作業を依頼する場合
ゲーム開発では、
UIデザイン+Unity実装
翻訳+LQA
キャラクターデザイン+3Dモデリング
イラスト制作+画像リサイズ
など、性質の異なる仕事を一人の外注先へまとめて依頼することがあります。
この場合、
「ゲーム制作費30万円」
だけでは、何に対する対価なのか分かりません。
例えば、
UIデザイン 15万円
Unity実装 15万円
のように、合理的に区分できる場合には、仕事内容と対価を見積書・請求書等でも明確にすると、源泉徴収の判断がしやすくなります。
契約書への具体的な反映については弁護士に確認してください。
国税庁も、デザインとそれ以外の仕事を一括して請け負わせる場合、対価を区分できるときにはデザイン部分について源泉徴収する考え方を示しています。
著作権・契約に関する一般的な確認事項
以下は、源泉徴収の判断に関連して把握しておきたい著作権上の一般的な論点です。
具体的な契約書の作成・審査、契約条項の法的評価、個別の権利帰属やライセンスの判断は、弁護士にご相談ください。
仕事内容を明確にしておく
「ゲーム制作一式」、「CG制作一式」ではなく、キャラクターデザイン、3Dモデリング、リギング、Unity実装、翻訳、LQAなど、実際の作業内容を明確にしておくと、源泉徴収の判定にも役立ちます。
納品物の範囲を整理しておく
完成画像だけなのか、PSD、Blenderデータ、Unityプロジェクト、ソースコード、音源マスターなどの元データまで含むのかは、著作権上の論点とは別に、取引内容を整理するうえでも重要です。
著作物を誰が制作したのかを整理する
外注先が一から制作したものなのか、ゲーム会社が提供した素材を加工したものなのか、第三者素材を利用したものなのかによって、著作権上の論点が異なります。
第三者素材の使用状況を整理する
市販アセット、フォント、写真、音源、OSS等が含まれる場合には、第三者の権利や利用条件が関係します。
具体的なライセンス条件の解釈は弁護士に確認してください。
著作権譲渡と利用許諾という方法があります
一般論として、著作権を移転する方法と、著作権をクリエイターに残したまま一定の利用許諾を受ける方法があります。
どの方法が適切か、具体的な条項をどう定めるかは弁護士にご相談ください。
文化庁は、著作権譲渡と利用許諾の双方について一般向けの契約書作成支援資料を公開しています。
著作権法第27条・第28条が関係する場合があります
3D化、翻訳、続編等の二次利用では、著作権法第27条・第28条が問題となる場合があります。
具体的な契約への当てはめは弁護士に確認してください。
著作者人格権等が関係する場合があります
著作者人格権は譲渡できません。
また、声優等については実演家の権利が関係する場合があります。
具体的な利用方法と権利関係の判断は弁護士に確認してください。
源泉徴収対象となる作業を税務上区分する
デザイン、翻訳等と実装・テスト等が混在する場合には、作業内容と対価をできるだけ明確にし、源泉徴収対象となる部分を税務上判定します。
源泉徴収する場合の税率と納付
原稿料、デザイン料、作曲料、翻訳料など、所得税法第204条第1項第1号の対象となる一般的な報酬については、1回に支払う源泉徴収対象額が100万円以下の場合、
支払金額 × 10.21%
で源泉所得税及び復興特別所得税を計算します。
100万円を超える場合は、
(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円
です。
消費税等が請求されている場合
源泉徴収対象額は、原則として消費税等を含めた金額です。
ただし、請求書等で、
制作報酬 100,000円
消費税等 10,000円
のように報酬と消費税等が明確に区分されている場合には、報酬100,000円だけを源泉徴収対象として差し支えありません。
適格請求書発行事業者以外が発行した請求書についても、明確に区分されていれば同様の取扱いが認められています。
いつまでに納付しますか?
原稿料、デザイン料、作曲料、翻訳料などから源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。
これらの原稿料等は、給与や一定の税理士等の報酬とは異なり、源泉所得税の納期の特例の対象にはなりません。
よくある質問
Q.制作費を支払った場合、著作権はどのように考えますか?
外注先が著作物を創作した場合、制作費を支払い、完成データの納品を受けただけでは、原則として著作権までゲーム会社へ移転しません。
一般論として、制作費の支払いだけで著作権が当然に移転するわけではありません。著作権を移転・利用するための具体的な契約条項については、弁護士にご相談ください。
Q.著作権法第27条・第28条はどのような場面で関係しますか?
翻訳、翻案、3D化、続編など二次的著作物に関係する利用では、著作権法第27条・第28条が問題となる場合があります。
実際の契約でどの権利をどの範囲まで確保すべきか、条項が十分かという個別判断は、弁護士にご相談ください。
Q.著作物であれば必ず源泉徴収が必要ですか?
いいえ。
著作物かどうかと、所得税法上の源泉徴収対象報酬かどうかは別の問題です。
プログラムコードの作成が、報酬の源泉徴収の対象にならないことは典型例です。
Q.個人イラストレーターにキャラクターを一からデザインしてもらった場合は?
オ リジナルキャラクターを外注先が創作した場合、原則としてそのクリエイター側の著作権を確認します。
ゲーム会社がその成果物を移転・利用する場合には、著作権上の権利処理が問題になります。
具体的な契約条項については弁護士に確認してください。
制作報酬については、国税庁がイラストの創作・意匠をデザイン報酬として源泉徴収対象とする質疑事例を示しています。
Q.2Dキャラクターを別の個人に3D化してもらう場合は?
まず、元となる2Dキャラクターデザインについて、3D化に関する権利が問題になります。
さらに、3D制作者が新たな造形表現を創作した場合には、その部分についても権利関係を確認します。
著作権法第27条・第28条を含む二次的著作物関係の論点が生じるため、具体的な契約上の対応は弁護士に確認してください。
Q.個人プログラマーへの外注費は源泉徴収不要ですか?
一律には判断しません。
一般的な「プログラミング」という名称は、国税庁が原稿・作曲・デザイン・翻訳等について示す表には明示されていませんので、実際の業務内容を確認して判断します。
Q.翻訳とLQAを同じ人に依頼する場合は?
可能であれば、翻訳・リライト・校正と、表示確認・動作確認を分けます。
翻訳・校正と単純なテストでは作業の性質が異なるためです。
国税庁は翻訳等を源泉徴収対象として取り扱っています。
Q.外注先がAsset Store、フォント、市販音源、OSSなどを使っていた場合は?
外注先との権利処理とは別に、第三者素材については、その素材のライセンス条件が問題になります。
具体的なライセンス条件の解釈や、今回の利用が許されるかという個別判断は、必要に応じて弁護士に確認してください。
税務上は、外注先自身が制作した部分と第三者素材を区別できるよう、使用素材や業務内容を整理しておくと取引内容の把握に役立ちます。
まとめ
ゲーム会社が個人クリエイターへ制作業務を外注するときは、相手の職種名ではなく、実際に何をしてもらったのかから判断することが重要です。
まず、その作業によって著作物が生まれるのかを確認します。
著作物が生じる場合には、誰が著作者となるのか、著作権法上どのような権利が問題になり得るのかを把握します。
個別の著作権譲渡・利用許諾、著作権法第27条・第28条、著作者人格権に関する具体的な契約判断は、弁護士にご相談ください。
そのうえで、
原稿・脚本なのか
デザインなのか
作曲・編曲なのか
翻訳なのか
出演・実演なのか
という支払報酬の実質から源泉徴収の要否を判断します。
ゲーム制作では、シナリオ、イラスト、BGM、翻訳のように国税庁資料との対応が比較的明確な作業がある一方、3Dモデリング、リギング、モーション、VFX、プログラミング、効果音、LQAなど、実際の作業を分解しなければ結論を出しにくいものもあります。
「著作物が生まれるか」、「どのような著作権上の論点があるか」、「その報酬は源泉徴収対象か」を分けて整理することが重要です。
当事務所では源泉徴収を含む税務上の判断を行い、個別の契約書作成・審査や法的判断が必要な場合は弁護士への相談をご案内します。
※このページは、日本のゲーム会社が国内居住者である個人・個人事業主へ業務委託する場合について、源泉徴収を中心に一般的な情報を整理したものです。
著作権・契約に関する記載は一般的な制度・論点の情報提供であり、法律相談や個別契約の法的判断を行うものではありません。
具体的な契約書の作成・審査、権利帰属、ライセンス、紛争・交渉等については弁護士にご相談ください。
